この空間を作っていた魔獣は何の抵抗もせず、あっさり倒れてしまった。
フィールドを形成するだけで魔力を使い切っていたのか、あるいは・・・。
隣で戦っているソウハに視線を向ける。
蒼い冷気の魔力を纏ったソウハは、いつもの倍くらいの数の術で波状攻撃を仕掛けている。
この術式、どうやら手数が増えるだけでなく相手の魔力も封じるようだ。
昨晩、唸りながら考えていた術式はこれだったのかもしれない。

そうとわかれば話は早い。
ソウハの術に合わせてアラヤも術を撃ち込む。
昨日は異常な再生力でなかなか致命傷を与えられなかった魔物だが、ソウハが魔力を封じていたおかげで驚くほど楽に倒すことができた。

戦闘が終わり、ソウハに声をかける。
ソウハは笑顔を返すが、へなへなとその場に座り込んでしまった。
やはりあの術は相当負担が大きいらしい。
しばらく休んでなんとか氷の世界からは抜け出せたが、ソウハはもう動けなさそうだった。

命に別状はなさそうだが、ソウハは相変わらずぐったりしている。
こういうときは・・・。

アラヤは料理の準備をしながらソウハに尋ねた。

*----*----*

次の日。

ソウハはすっかり回復して、やたらとご機嫌だった。
変わり映えしない見慣れた景色の中を、他愛もない話をしながらいつものように歩く。
しばらく歩いていると、どこからか話し声が聞こえてきた。
情報や物が交換できるかもしれないとのソウハの提案で、声がする方へと向かう。

そこにいたのは黒と白の男女だった。
黒い男はこちらに気づくと、友好的に声をかけてきた。
ソウハも男に対し、笑顔で言葉を返す。
しかし・・・白い女からは敵意が溢れている。

女は男を制止すると、こちらにレイピアを突きつけてきた。
どうやら仲良くはできないらしい。