早朝のとある路地裏


「マスター、こっちは終わりましたよー」
店内の片付けを終えた、女性がひとり裏口から出てきながら声をあげた

「マスター？　どうしましたー？」

ゴミ捨て場のあたりで、マスターと呼ばれた男がなにかを抱え立っている
「あぁ、この世界で捨てられる。というのも不思議な話だが」

そういう彼の腕のなかにはくたびれたジャケットに包まれ、頭をすっぽりを覆う帽子で顔が隠れた小さな子供がいた
「なかなか興味深い子でね」

彼はそういいながら、女性の前で子供の顔にかぶさっていた帽子を持ち上げる。
子供の顔が露わになる

「あらあら、これはまぁ、なかなか立派なものですね」
「だろう？しばらくはうちで保護してみようかと思っているんだがどうだね」

「構わないかと思いますよ、なんなら私が立派な子に育ててあげましょうか！」
「いや…君に預けるとどうなるかわからんからな…とりあえずは店の1室で保護しておこう」

「親がこないとも限らん、こんなご時世だから望みは薄いがな」


「そういえばこの子の名前、どうするんですか？」
女性が腕の中の子を覗き込みながら問う
「帽子に刺繍がしてあるんだが、だいぶ擦り切れていてなー」

【　 ー　 ニール 　 　 　 　　 　 ス】

「ほとんど読めないですね、辛うじてニール…と読めますが」
「そこしか読めないのだよ、ないんかしら関わりあいのある名前だとは思うんだが」

「いいじゃないですか、ニールちゃん。かわいがってあげてくださいね★」