「…ふぅ、ぽかぽかですわね〜」
心地よい風に誘われ、木陰に立ち止まる。

「そろそろランチの時間ですわね、お支度をしなくちゃ」
そう呟きながら荷物袋から桜子が取り出すのは、カトラリーセット、簡易コンロ、フライパン、テーブル、
ティーセット、卵、レタス、ベーコン、大麦パン、……


どこに入ってたんだとつっこんではいけない。桜子だから。


手際良く支度をする桜子を、通りすがる他の部隊が遠目に眺める。
「なんだあのセット…」
「え、まさかあの人も一揆に？あれ持ち物なの？手荷物？」
「きっと3部隊くらいで手分けして持ってるんじゃないの？にしては、テーブルが小さいけど…」
「うまそうだな」
最後の一人のつぶやきに、全員の喉がごくりと上下する。
草をひろって喜んだり、マッスルポテトは食べられないかなーなどと考えている自分たちの食生活と比べると、
桜子のそれは輝いて見えた。

「見ろよ、あのパリっとしたレタス」
「卵なんてどうやって手に入れたんだよ、くっそ半熟食いてぇ」
「紅茶…ちょっとまってあのラベル。香りがいいんだよね」
「あぁ、ベーコンのはじっこがカリカリになってる香りがするぜ」
ふらふらと足が勝手に桜子のテーブルに向ってしまう。おそろしい引力だ。
だめ、抵抗できない…ッ！

近付く足音に、まな板から顔をあげた桜子は、笑顔で挨拶する。
「あらあら、こんにちは。これからお城へ向かわれるんです？」
「え、えぇ。そのぅ…」
「おいしそうだなーって…」
ぼそぼそと目をそらしながら呟く部隊に、桜子は神の一言を発する。


「よろしければご一緒にいかがですか？すぐお作りしますわね」


荷物袋から取り出される追加の材料。
数々の疑問から目をそらし、部隊は甘えることにした。
「「「「いただきまーす！」」」」



…………どこに入ってたんだとか、決して考えてはいけないですよ？