アラヤたちは二匹の見張りを難なく倒し、さらに奥へと進んでいるのだけど・・・。
すぐ傍を歩くソウハの顔をちらりと見やる。
その表情はこわばり、暗い影が差している。
ここにきてから移動中はずっとこんな感じだ。
アラヤは涼しいから休めるかもなんて思ったけど、ひょっとしたらソウハはこういう場所は苦手だったのかもしれない。
別にアラヤはこんな場所に連れてきてしまった責任を感じてるわけじゃない。
ただ隣でこんな顔をされているとこっちまで気が滅入る。
それに戦闘にも支障がでるかもしれない。

もう一度ソウハの方を見るが、その表情はやはり暗かった。
そういえばアラヤはこの蒼い少女のことを何も知らない気がする。
普段ならそんなことには興味は沸かないのだが、少し話してみるのもいいかもしれない。
もちろんソウハのこの状態を回復するため、あくまで気分転換に、だ。

アラヤの言葉を聞いてきょとんとするソウハ。

ソウハの様子にはかまわずに言葉を続ける。
とりあえず当たり障りのない、趣味や好きな食べ物なんかについて聞いてみる。
しかしそれは前にも話したとソウハに言われた。
そういえば、うっすらとそんな記憶がある。話の内容はまったく覚えていないが。
正直に覚えていない旨を伝えると嫌な顔はせずに、しょうがないといった感じでまた話してくれた。

*----*----*

しばらく何でもないような話をしながら歩くうちに、ソウハの表情もいつもの明るさを取り戻してきた。
話の内容はいつの間にか、いつも使っている武器やら術式の話になっていた。

そういえばもうけっこうな時間を一緒にすごしているが、ソウハの旅の目的を聞いたことがない気がする。
教えてくれたことがあるのにアラヤが忘れているわけではないと思う。多分。

尋ねようとした言葉を飲み込む。
通路の先から人影が近づいてきたからだ。

人影の正体は司祭風の男。
その男はこちらに静かな敵意を向け、長々と一方的に何かしゃべっている。
その様子を見ていると何故か小さなイラつきと不快感が生じた。

露骨に敵意を返してみる。
我ながら、らしくないと思う。

男がやれやれといった感じで術式を展開すると、地面が歪み不死者が数体呼び出される。

若干慌てているソウハを尻目に、こちらも術式を展開する。

今日のアラヤはやけに饒舌な気がするがきっと気のせいだ。