また、夢を見ていた。
　幼い頃見たそれと同じ夢。
　ただひたすら兎を追いかける夢。
　私はその兎が怖いのに、なんでかどうしても捕まえなきゃって。



　そうして　私は　必死に　手　を





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　今日の目的地は砂地。そして初めて、この世界で知り合った人とパーティを組むこととなった。
　まだ相手の顔を見たことはない、ルカが知り合って話を持って帰ってきたからだ。
　悪い人ではないそうだから、その辺りの心配はないけれど、自分の実力不足で足を引っ張るのだけは嫌だな、なんて考えていたのが昨日の夜。
　そんなことを考えていても陽が落ちまた昇ればその日は直ぐに来た。

　出発する直前、ルカの部屋よりも先に彼の部屋を訪れると、今日は行かないと口にされた。

　いつものなんともなさそうな表情で彼はそう言う。
　確かに、シズにとっては暑いのも寒いのも身体に毒だ。
　今まで一緒に来れていたのは、場所が平原だとか、川辺だとか、気候的には問題のない場所だったからであって、でもそれが気温が極度に高い砂地となれば話は変わってくる。
　それに、本当なら彼をあれこれ連れ回すのはよくないのだ。

　わかっているし、わかっていた。当たり前のことだ。
　仕方のないことだと理解している、けれど。

　ほんの少し。
　こっちに来てから二人はいつも傍に居てくれたから、だから、ちょっとだけ。

　彼が自分の名を呼ぶ。見上げると微かに、優しい表情を浮かべていてくれた。

　そしてぽすんと彼が自分の頭に手を乗せる。少しだけ撫でてくれて、直ぐに手は離れた。

　見透かされているようだと思った。
　きっと見透かされているんだろうな、とも思った。

　我儘を突き通したところで困るのは彼だ。
　理解しているから口にはしない。
　一人で待つ彼の方がきっと不安だ。
　だからせめていつもの顔で、手を振ろうと思って。

　なんとかいつも通りの私では居られた気がするけれど。
　それでもやっぱり、ほんのちょっぴり。

（どうやら、まだ名前を覚えられていないようだ……）

——イェジは　エティたちを　凝視　している　！

——少し言いよどんで。

　と、小さく、先に言っておいて。
　砂地のその先、相対するであろう敵の方を見遣った。

「気になさらないで下さい。……ここ、一揆の参加者が多いので、表向きの道具屋だとすぐに尽きるそうで。普通に道具屋も傍にはありますが…大抵売り切れです、ので。
　懇意にしている所が…これから行く場所なので、欲しいものも、すぐに手に入る、かと」

　言われた事をすぐに記憶できるならそれこそ超人である。人たるあなたが気負う必要もないのだから。
　これからの道、覚えておけば損なく物を取る事が出来る筈、だから。

『なぉ……うなぅ』

ラウは嬉しそうに頭を揺らす。人に慣れているらしく、寧ろ自分から頭を擦りつけて、アリシアの御手に甘んじる。

「そうでしょう。……といってもこの子、最近一緒になり始めたんですけど。……兎、うさぎ。兎も可愛らしくて愛嬌在りますね。抱き心地も良いですし」

などと同意、であろう言を紡ぎ、両手を前に組んで、にへらと笑い掛ける。

「アリシア…さん…ですか。よろしくお願いしますね」
『にゃお……なーぅ』

わかるかな、という呟きに、猫は「承知」とでも云いたそうにアリシアを見上げて、のんたり尻尾を揺らした。

やがて、自分たちは面倒そうに折れ曲がった路地を歩いて道具屋の前まで、10分ほどかけてたどり着く事になる。

まわりをくるくると回るエティエンヌを目で追う。

その反応を見ると、顔を覗き込むことをやめて、エレネは申し訳なさそうに笑う。

思い出したように名乗った。名乗り忘れていたことを気付かなかった様子だ。

メープルは謙虚に話しかけてきた少女をまじまじと観察した。

兎族のくだりは聞き流すことに決めたようだ。

そう言ってまたにこりと笑う。少女が視線を逸らした意図を察して楽しんでいるらしい。

そこまで返し、少女の目線に気付く。

その刹那、瞬きでもすれば見逃しそうな僅かな一瞬、
キーリアの顔は「大人しくしてろと言ったのに・・・」と言いたげに引きつった。

とりあえず気を取り直して、固まったままの少女に問いかけてみた。

（道中、なんとか二人の名前を覚えることができたようだ ▼）

深く息をつき、気持ちを落ち着かせようと小さく呟く。
武器を構えて、前を向き。表情は、いつもより強張っていた。

ふ、と息をついて、皆へ視線を向け——瞬く間に、表情が氷解する。

言いながら俯いて、言葉は尻すぼみに消えた。

微笑んでから一礼。深く息をついて、相手を見据えた