※Eno.458の日記とリンクしています
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マグノリア

　ユカラの実の妹。同じく奴隷としてユカラとは違う所に売り飛ばされ自力で脱走。
　その果に行き倒れて死にかけていたが“オリフィア”という名の女に救われる。
　救済と使役を目的としオリフィアの手によって兎の獣人にされ、任意で巨大な兎に変身が出来る。
　ユカラと再会し一緒にレイヤの義妹として生活している。
　オリフィアの兄であるユリシスから離別前に貰った指輪を大切にしている。
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「なんだ、これは。」

兄上様が私を見て眉間に皺を寄せ、そう呟きました。
今日は早くに目が覚めたのでセツカ様とユカラと3人でお散歩に出かけたのですが、
気付いたら私の周りにどんどんどんどんと蝶々さんが集まってきて私のあちこちにとまってしまったのです。

「そんなもの、追い散らせばいいではないか。」
「で、でも、可哀想ですし…」
「そう言って、ここまで全部連れてきちゃったんですよ。」

事情を説明すると兄上様が呆れた様に仰るのでそう答えると、セツカ様もやれやれと言ったご様子で肩を竦めます。
ユカラは特に何も言わず私にとまっている蝶々さん達を観察していました。

「そうは言っても、このままというわけにはいかんだろう。確かに、実験材料にはもってこいだが。」

兄上様が蝶々さん達をじっと見つめながらぽそりと呟くと、ざあ、という音と共に私から蝶々さんが一斉に飛び立ちました。
蝶々さん一匹だと聞こえない羽音が耳に届き思わず身震いしてしまいましたが、
はっと我に返り慌てて兄上様の手をとり見上げます。

「あ、あの、兄上様！材料はちょっとかわいそうなのでやめてあげてください！」
「ん？わかったわかった、冗談だ…と、まだ1匹ついるぞ、マグノリア。」

そう言われ自分の身体をきょろきょろと見回すと、私の胸元に未だとまっている紫色の蝶々さんが、一匹。
とても美しく優しい紫色の蝶々さんですが、このままでは兄上様の錬金術に使われてしまいます。
私はおずおずと兄上様に提案をしてみることにしました。

「ええと、折角なので離れるまではこのままでいようと思うんですが、駄目でしょうか？兄上様。」
「…ふん。まあ、いいのではないか。野生の蝶だ、どうせすぐに離れるだろう。」
「そうですね…ブローチみたいでなかなか似合ってるぞ、マグノリア。」

兄上様の回答を聞き、セツカ様も一緒にご安心して下さった様で、微笑みかけて下さいました。


そう、この子は野生の蝶々さんなのですから、きっとすぐに離れてしまうでしょう。
ですから無理に私達が追い払う必要はないですし、そうしたいと思う理由も何もありません。


けれど、不思議なことにこの紫の蝶々さんはずっと私から離れずにいてくれました。
兄上様達は訝しがってらっしゃいましたが、私は何だかこの蝶々さんが私を見守ってくれている様な気がして…─



とても懐かしく嬉しい気持ちになったのです。

両手をめいっぱい広げて大きさを表した

地図を出して、ジェイド王国でも人里から遠い山奥を指した。