-幕間-


——ムッコロボが此処とは違う世界、『メルンテーゼ』に漂着してから一週間余りが過ぎた。
連絡によれば、今は同じく一揆に参加している三人の人達と行動を共にしているらしい。

…でも大丈夫なのかな？ 魔法少女は(三歩くらい譲って)ともかくとして、
一人は素性が余り分からないし、もう一人はなんか後ろに黒子が構えてるし…

とは言ったものの、ムッコロボ自体も相当なキワモノだからなあ。言える側じゃないか。
『オズの魔法使い』…だっけ。あれも女の子がブリキ人形やカカシなんかを引き連れてる話だし
そう考えてみると案外バランスは取れてるんじゃないかなと思えてきた（失礼な話だけど）

——僕達の世界以外に、色々な世界が存在してるだなんて。

僕達の世界の主軸となっているのは科学で、『剣と魔法の世界』なんていうのは御伽噺の中の話だった。
別世界へ往来する手段なんて、今の今まで開拓された事は無い。
そもそも、自分の住んでいる『そこ』が無数に分かれた世界の一つだなんて考えもしていないのだ。
僕達の世界の住人は、自らが住まう『この世界』が全てだと思っているだろう。僕も先日まではそうだった。

でも、ムッコロボから送られてきた映像、そして情報は、その考えを微塵にするに足るものだった。
図鑑でも見た事の無い生物、自然環境が破壊されつつある僕達の世界には有り得ない、肥沃な大地。
そして、ムッコロボが(あのナリでどうやって集めてくるのか分からないけど)集めてくる情報。
情報を色々と整理してみると、僕達の世界に度々現れるオーパーツや、『アンノウン』と呼ばれる存在が
それらを裏付けるものとして浮かび上がる。恐らくは、それらは他の世界から来たものなのだと。

不可解に思っていた事象の数々が、パズルのピースのように着々と埋まっていくのを僕は感じた。

話によると、分割された世界をある程度自由に往来している者もいるというし
召喚されたムッコロボと違って、製作者の意思でメルンテーゼに転送された兵器もあるとか。
…つまり、その世界には何かしら世界間を移動する為のテクノロジーがあるという事だ。

そんな彼らにとっては当然のような技術を、僕達の世界は持っていない。
これは技術者として、科学に携わる者としては聞き捨てならない話だと思う。

…それならば、今この情報を知り得る僕がやるしかない。
別世界への干渉を可能にするシステムを構築し、ムッコロボを元の世界へと戻す。
そして、これを確立する事で他の世界と同じ土俵に立つ…まあ、これはプライドの問題だけど。

通信で送られてくる信号の波長を解析すれば、転送システムを作り出せるかもしれない。
元々ワープ・システムを試験的に作っていたし、それも応用すればあるいは…
監視システムはとっくに細工済みだし、妙な機械を組み立てていても上の連中は気付かないだろう。

椅子から少し身を乗り出して、僕は件の通信用端末を起動した。
ザーザーというジャミング音が少しだけ鳴った後、見慣れたポンコツがモニタに映し出された。

相変わらずこの箱の寄せ集めみたいなロボは言う事が頓狂だ。
一応この擬似人格プログラムを構築したのは僕だけど、適当に作った結果がこれとは。
勢いに任せると大概ロクでもない結果になるんだと言う事を、僕は再認識した。

…それでも。例えポンコツでも。僕にとっては唯一とも言える、自由に喋れる話し相手だった。














-第五話-『強靭！ 光の城砦プラズマウォール』

行動を共にしている仲間の一人、マーガレットさんに新防御兵装を作製して頂きました。
マグナ博士から送られた設計図を基に構築されたプラズマウォール・ユニットです。
試験運用で装備されていた試作バリアとはエネルギー効率が段違いの、まさに逸品と言える代物。

『パワーストーン』と言われる魔力が蓄積された鉱物、これを利用する事で鍛錬や装備の生成が
可能なのだと聞き及んでいましたが、よもやこれ程のものとは。機械ながらに驚嘆に値しますね。

機械らしい——本来ならば、確かに機械らしく敵機体を殲滅するだけで良かったのですが。
しかし生命体を相手取る事が殆どの現状、従来の機兵と同じ思考パターンでは現状を打破出来ません。
柔軟な思考プログラムを自ら再構成し、あらゆる状況下でも動けるようにならなければ。

叫びと共にレバーを勢いよく鳴らす！

……俗に言うレバガチャであった