山から下りて来て、もう何日目になるんだろうか。

「疲れたぁ〜」

エンブリオから唐突に出征宣言を突き付けられて、
流れ流れて旅を始めたのはいいが、長らくの山篭りで
外の世界を知らなかった琴音にとって、それは衝撃の連続だった。
未知の生物に襲われるわ、盗賊にお金を盗られるわ・・・。

そして今。

「何処に行けばいいんだろ・・・」

エンブリオも黙ったまま何も語りかけてこない。
おそらく、エンブリオ自身も目的地への道を知らないのだろう。

「もー！何かいったらどうなのっ！このままじゃお腹が空いて
死んじゃうよーっ！」

と、一人で喚いていてもただ体力を消耗するばかり。

「お、こんなとこで何しとるんじゃ？」

声の方を振り返ると、赤毛の男が一人。
一見普通の青年のようだが、その口ぶりには壮年、いや老年の
貫禄があった。

「えっと、王様のところに行きたいんだけど、その、道が分らなくて・・・」

「迷子か？王様のところ、か・・・」

暫く赤毛の男は考えを廻らせ、

「ワシも丁度王のところに用があってな。一緒に来るか？」

当然、見ず知らずの男に簡単について行く女性などいない。

「本当！？行くっ！ついてくっ！！」

・・・琴音以外には。