—航海日記二日目—

……ラルフのオッサンと手合せしたが、どうにも不完全燃焼である。
というのも、明らかに手を抜いていやがったのだ、あのオッサンは。
まぁそれで実力を認めてくれるというのならば文句は無いが、どうも腹に据えかねる。

いい、これについては一旦忘れよう。
ともあれ、俺は正式に一揆のメンバーに数えられることとなった。
さっそく水辺に繰り出してみたが、やはり水というものは……少し怖い。
海ほどではないが、川も十分に恐ろしいところだ。
いやはや、自分で自分に呆れざるを得ない。
水を恐れる船乗りなんて、笑い種どころの騒ぎではない。
この病がいずれ治ることを祈りたいが、そう都合よくいくものだろうか。
まぁ、それもこの一揆が終わってから改めて考えよう。
少なくとも、一揆に参加している間は海に戻るってことはないだろうから。

さて、妙に元気な嬢ちゃんに曰く、一揆は仲間を作るに越したことはないそうな。
んな都合よく見つかるもんか？
……と思ったら見つかった。今日はもう眠いので、これについては後日記すとする。

相変わらずあてもなく進んでいるキーシュの鼻腔に、なんとなく磯の香りを感じとられたような気がした時、ふと横を見ると木陰に佇む一人の男性を目にした。
歳は自分よりひとまわりは上だろうか、引き締まった筋肉はそれが長年の賜物であることを物語っている。
そしてたった今手入れをしている最中なのであろう特徴的な二股の長槍が彼の生い立ちを如実に表していた。

ハンターを自称していようが、所詮好奇心旺盛な少年である
気になりだしたらしょうがなくなる性分も相まって、気づいたときにはキーシュはその男性に駆け寄っていた