小川のほとりをぼんやりとしながら進む。
月光や蛍光する鉱物、蛍のように輝く植物の光を小川が反射する光景は中々に美しい。
眺めているだけで暇潰しにはなる。
…実際には暇を潰している場合ではなく、元居た世界に帰還するための手段を模索するなり、
この世界についての情報を収集するなりとやるべき事はそれなりにある、のだが。

（ああ、もう…面倒臭いわねえ）

考えるのが億劫になってきていた。元々、小難しい事を深く考えるのは好きじゃない。
誰かに命令するのではなく、自分でやるしかない…なんて状況はもっと好きじゃない。
なぜ妹が傍に居ないのだろう。あの子が居れば面倒な事は全部任せられるのに。
誰がやったか知らないが、あの子とは同じ部屋で寝たのだから、
同じ場所に転移させる位の気は利かせてもいいハズだ。
段々イラついてきた。目の前の幻想的な光景も、何の慰めにもならない。


…苛々しながら川を辿り進むと、先に人影が見えた。

「・・・・何者だッ」

なにやら半裸の男が喚いている。どうやらこの世界の体制側の兵士の様だ。

（…へええ。気が利いてるじゃないの）

わざわざこちらのストレス解消の為に自分の命を差し出しに来るとは関心な奴だ。
全く気が利いている。転移させた奴にも見習わせたい。