8月11日
　どうも、文箭は私に不信感を抱いているようだ。
　先日、兵士の魂を取り込もうとして制止されて以来、特にそう感じる。
　まあ、その制止は無駄になった訳だが。

　私の傷付いた魂を癒すには、魂を喰らわねばならない。
　樹木が折れた枝を治す為に、地の養分を必要とするように。
　それを詳しく説明すべきなのだろう、本来は。しかし。

　今のところは、仄めかす程度にしておこう。
　理解を得るのは難しいだろうし、何より慄く文箭の魂を覗くのはなかなかに面白い。

アイリスの言葉——『女性3人を相手に言うべき事かしら』——それに、反応すらできない様子である。

誰にも聞こえぬよう、そっと溜息を吐いた。

エルザの言葉を聞き、我が耳を疑うかのように、ハッと顔を上げた。
“紙のような白い顔”をして。

ごくりと喉が上下する。冷や汗が一つ、頬を伝って、落ちずに消えた。

そう言いながらも、目はやや左へ動く。何かを思い出しているようだ。