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その日は初めて一人でやろうとしてた。
お母さんに教わった通り、それなりにヒトの多い通り。
少しおどおどとした様子を装い、夜の道をトボトボと歩く。

暫くして一人釣れた。

『ねぇ、一人で何してるの？』

「えっ…？あ、あの、なんでもない、です……」

随分軽いノリで声を掛けてきたのに合わせて身体を硬直させて見せる。
そのまま消え入りそうな声で返事。

あんまり怯えてると声を上げて逃げそうって思われたりするんだそうだ。
軽くキョドった方がいけると思わせやすいみたい。
ホント、初対面で見抜けてる気になってる馬鹿はお目出度い。

勿論、この相手はお目出度い馬鹿だったおかげで私の目論見はあっさりと成功した。
半ば引きずられるようにして私は馬鹿の後ろを付いて行く。

この馬鹿に少しでも危機感なんてものがあれば、ちゃんと振り返ってほくそ笑む私が見えただろうに……。

初めての、最初の最初の記憶。



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ぎゅっとフードをかぶり直しながら自然に笑みが溢れる。

後方にいつの間にか現れた大きな異形がいる。
オルガよりもさらに不気味な姿だ。

尻尾を見ているようだ……。

じろじろ見られると、こちらも同じように、じっと見ます。
目深にかぶったフードの下で、なにかがざわざわと動くのが見えました。

フードを目深にかぶりなおして、まっすぐ視線を向けて、話を続けます。

声には先ほどまでの棘はありません。
一歩、後ろに離れました。

話を終えると、その場から立ち去ろうとします。

帽子の上から彼女の頭をなでようとする

何故か興奮してカレーについて語りだす変人

声のする方へ振り向くと、黒い正装の女性が立っていた。

少女の視線に気付いたと同時に少女が笑みを浮かべて近づいてくるのが分かる。
声をかけられ、思わず自然と笑みが零れ出す。

柔らかな声色だが、口調は砕けている。

突然声をかけられたせいか、きょとんとした顔をする。

自分を指差し確認

少女は困ってしまった。話しかけた理由なんて無かったから。
しかし、混乱の産物だなんて言うのは……流石に情けないなぁなどと考えていると、目の前の獣人の少女の輝く笑顔が目に入る。

少女は自らの発言に内心汗を流す。
不審者と呼ばれても仕方ないであろう発言だった。

どうやら自分はこのどうしようも無い世界に堕ちて、大分参っていたらしい。
何処かで、ほんの小さな癒しを求めていたのかもしれない。

だから、少女は生前の様に挨拶をする。
それに意味が無かったとしても。

そう言って少女は美しい所作で一礼した。
握手を求めようと出した手でつい頭を撫でてしまったのは無意識の為せる業だっただろう。