こんにちは、ルビーです。
きょうもげんきです。



だれですか、覗いているのは。
なぐりたおしますよ。




・・・そう言えば、ご主人様はとてもシャイなひとでした。
わりと無口なんですけど、とても物知りで、私が聞けば、分かるまでゆっくりと教えてくれるひとでした。

ご主人様は、色々なことを教えてくれました。

この世界の美しいもの、醜いもの、別け隔てなく、ありのままを私に教えてくれました。
世界中の贅沢をあつめたような美しい王城から、世界中の貧困を集めたようなスラム街まで。
その美しい王城に篭って食べてばかりの肥え太った城主や、自ら節制し、考え、歩き、善政を敷く領主まで。
貧困と空腹しか無いようなスラム街の中、たった一本の鉛筆で様々な世界を描き出す貧しい貧しい芸術家や、その環境の中で心が壊れてしまって、人を傷付ける事に微塵の抵抗も感じなくなってしまったひと。
どんなに美しい場所にも醜い物はあり、どんなに醜い場所にも、美しい物はあると教わりました。

最初は冷たく、暴力にあふれた世界だと思ったこのメルンテーゼも、見方を変えてみれば、とても美しく思えるのです。


ご主人様は、他にもいろいろなことを、私に教えてくれました。
字の書き方や読み方、詩の歌い方、踊りのステップ、
火の起こし方、料理の作り方、食べられるものと食べられないものの見分け方。
ほんとうに沢山のことです。

私は、私のおとうさんやおかあさんの顔を知りませんが、そういう人達からもらうはずの、本当に本当にたくさんのことを、私はご主人様から教わりました。




・・・・・・・あれっ？

そう言えば、ご主人様がどうしても、私に教えてくれなかったことがあります。
どんなに聞いても、上手くはぐらかされてしまって、けっきょく私はそれを知らないまま、ここにいます。


・・・・赤ちゃんの作り方なんですけど。