過ぎた願いは罪だ。
願いに釣り合う代償も払えぬくせに。

そう言って、悪魔は嘲笑う。

分不相応の、願い。
一体何処で、その線引きがされたのだろう？

彼に自分を知って欲しいと願ったこと？
彼と共に在りたいと願ったこと？
幸せな時間が永く続くことを願ったこと？


それとも、彼に永遠の愛を誓ったこと？




でも。

「どんな罪も背負ってあげる。」

薄れていく意識の中、彼がそう言ってくれたから。

自分の願いが、大罪でも構わない。
自分の願いに、後悔はしてない。

自分の気持ちは、全く揺るがない。
少し悔しそうな悪魔に、ざまあみろと思う。


「だから、この手が汚れて変わってしまっても……」


そんなこと、約束するまでもない。

そう言葉にする力は、もうないけれど。
最後の時まで自分を力強く抱きしめてくれる腕の中で、うまく微笑めていたらいいな。


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「……なんだこれ。」

頬を伝う涙で、目を覚ます。

どうしてこんな夢ばかり見るのだろう。
悲しい夢でも楽しい夢でも、起きると涙がこぼれてしまう。
全く身に覚えがない感情なのに、こんなに心が痛むなんて、自分はどうなってしまうのだろう。
こんなんじゃ、またねこっぱちに情緒不安定だと言われてしまう。
鼻をすすりながら身を起こす。

「……あれ？」

そして、ねこっぱちがいないことに気がつく。
最近、黙っていなくなることが多い。
正直、いい気はしてない。

眉をキュッと寄せる。
涙を拭った手を見つめた時、不意に夢の中の声が蘇る。

『この手が汚れて変わったとしても』

夢の残滓を追い払うように、慌てて頭を振る。

「不良猫め……帰ってきたら、今度こそ尋問してやる。」





愛して欲しい、ボクの事を。

　多頭の蛇に腕をかじりつかれるのも意に介さず、
　間を置いて蛇を一頭一頭ちぎり捨てている仮面の者の姿がある。