久しぶりに……賊や魔物でない、公の兵士というものと戦った。
まだ腕が鈍るほど、軍を抜けてから期間は経っていないはずだが……慢心したか。
二人の兵を同時に捌けず、婆様にまで傷を負わせてしまった。情けない。
リュズガール(先日契約したシルフだ、風の名前を付けた。)が心配そうに頭の上でじっとしている。エリュムは……何が面白いのか、ニヤニヤと何か言いたそうな顔をしながら空中に浮かんでいる。どうせ負けたことをからかいたいんだろう。まだ何も言ってこないが。
……負けたが、闘争心は衰えない。そういえば軍属だった頃、余裕な戦いはつまらないと言っては部下たちに苦笑されていた。
やってやろうじゃないか。このままでは部下達に示しがつかない。



「オレの力を使わないからだよォ」
「……そうかもしれないな」
「オレさァ、アンタの魂もらうために居るけど、なーんかアンタが負けるの見るの嫌なんだよなァ」
「さっさと死んでもらったほうが良いんじゃないのか」
「んー、そうなんだけどな。なんかイヤなんだよ、オレもよくわかんねェけど」

「……。……お前と契約した時から思っていたんだが」
「なにさ」
「……死者が悪魔に……エンブリオになることはあるのか」
「オレに聞いたって知るわけないだろ」
「…そうだな。さて、もう一度戦略を練らないとな」