拝啓、お師匠様。

前回の手紙では、懐かしい出会いがあった、ということを書きましたね。

その出会いは、久しぶりでした。
ただ、その久しぶりの度合いが、私にとっての久しぶりと、その友人にとっての久しぶりは、大きな差があったのです。
友人にとって、私との出会いは、実に20年ぶりだったというのです。
20年という時間がその友人に流れていたことに、私は少なからず驚かされました。

世界は引き合っています。
（引き合っているということは、一方で跳ね除けあっているということでもあるのですが）
引き合い、時に触れ合うからこそ、私達は容易に（前提条件はあるにせよ）、世界を行き来することができる。

お師匠様を探しに、このメルンテーゼと呼ばれる世界に来ることも可能であったわけです。

世界が有限であるということは、これらのことからも言えます。

もし、仮に世界の数が無限であった場合、それぞれの世界は、無限に近づきながら、しかし、それぞれの世界の間の距離は無限であるがゆえに、無限に縮まらないのではないでしょうか。
もちろん、無限に近づきつつあるのは、無限に跳ね除けあっているからです。

無限に近づきつつあることが、無限に離れつつあることであるならば、永遠の命とは、無限に———

話していると、ゼフィの背後から巨躯を持つ異形が二匹やって来た。

質問ばかりじゃな、儂は。と、思うも好奇心は止められない。
何しろ、この世界は自分にとって『知らないことだらけ』なのだから。

　　　　　　　後ろ足で立ち上がってビスの足にしがみつく。尻尾は元気良く振られている。

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。