『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.07.11.21:25、とある研究所にて——


　マスターは無事だった。検査の為の入院だけで、無事だったのだが、
俺がマスターに止めを刺しかけてしまった。
　土下座をして謝罪したものの、今回の一件でかなり立腹していたのか、
冷たい一言と共に病室から追い出されてしまった。

　直前の記憶が殆ど吹っ飛んでいるが、マスターの態度から満足のいかない
戦闘結果だったのは間違いない。
　また、生存確認時の喜び方にも問題があったのだろう。
　マスターの身体が部分的に機械とはいえ、彼は人間だ。喜びの表現一つにも
細心の注意を払わねば、マスターに怪我を負わせてしまう。力加減の配慮も
足りなかったのだ。

　俺は……サポートロボットとして欠陥が多いのか。それって補助役として
失格なんじゃないか。



「ショウ君って……射手座だったっけ？」
　女性向けファッション雑誌を捲りながら、クルゥという名の女性の科学者が
聞いてきた。マスターと同じく『核(コア)』を宿した女性だ。
「アースでいう十二星座を指しているなら、射手座ですね」
　女性の好みそうな話題だ。マスターと彼女の相性を占っているのだろうか。
しかし、彼女には旦那がいなかったか？
　よからぬ結論を口にする前に彼女は言った。
「ミライ君は6月1日製造だから……双子座になるのかしらね？」
「製造日が誕生日であるなら、俺は双子座ですね」
　彼女は手元のファッション雑誌を見ている。星座占いの記事があるのだろう。
「あら、射手座と双子座って対極の星座ね。友人としても相性最悪ですって」
　俺とマスターの相性占いだったらしい。アースでは女性の間でおかしな嗜好が
一部で流行っているというが、それの一種だろうか。いやいや。そういう嗜好は
彼女にはない筈だ。
「相性最悪……ですか」
「誰だって失態はあるわ。ロボットだからって、そう深く悩むことないんじゃない。
星座のせいにして、次で挽回すればいいわ」
　彼女なりのロボットへのフォローだったのか。
「失態は失態です。非科学的で根拠のない占いが原因じゃない。
俺はマスターを守りきれなかった。駄目なロボットなんだ」
　嫌悪感が増すばかりだった。
「あら、私のアーク以上にお堅い人工知能持ちさんね。アークならすぐに
気持ちを切り替えてくれるけど、繊細な子に育っちゃったわね。
それとも、マスターであるショウ君に似たのかしら」