以前ワハブが植えた実は、順調に、小さな葉を増やしている。

時折、葉の表面を小さな少女ーー契約したエンブリオの手がなぞり、細かい虫を捕らえる。
捕らえた虫は、少女が手にする袋の中へ吸い込まれていく。

今のところ、捕らえた虫の行方はしれない。
だが、葉に纏わりつく害虫は駆除されていると知り、ワハブはそれ以上気に留めなかった。




あるとき。
どこからともなく、一匹の蜥蜴が現れた。
芽の高さと同程度の全長だったが、エンブリオの少女にとっては巨大なものであり、後ずさりさせるものであった。

ワハブはそれをただ眺めているだけであったが、
蜥蜴の周囲に炎が纏わりつくと、せっかくの芽を燃やされては堪らないと、一変して手を出してきた。

炎に構わず蜥蜴を掴むと、観念したのか炎はあっさりと消え失せ、ワハブの手中で大人しくなった。
その蜥蜴の様子をみて、適当な場所で解放しようと手を離そうとしたそのとき。
蜥蜴は赤々とした炎のような光を放ち、ワハブの手中へと吸い込まれていった。

二体目のエンブリオとの契約である。

少しムッとしたようだが、すぐに気を取り直し。

アルキメンデスは右手を差し出した。

心なし尻尾と耳がたれてる。

ますます興味津々な目でまじまじと見つめ。
果実をもいで食べたのには目を見開いて驚き

まだ見上げている。