Vanetta's Diary - Page.4

メルンテーゼの一揆に適当に紛れ込んで４日目。
ひとまずは一番楽で人の多そうな平原地帯をゆっくりと進行中。現状まだなんとか先頭集団についてってはいけてるみたい。
砂漠やら山岳地帯やら、明らかに厳しいルートで進行してる人も居るらしいけど……ご苦労様よね、ほんと。
それでそこそこ結果出してる人も居るっていうんだから、ほんと世界は広いわ。飽きないわね。

というかね、本当に、あの城っていうかあの城の周りおかしいって！
ラルフとルリアンナに会ったあの丘から城は遠目にでも見えたはずなんだけど……
いや、そりゃね？　見えるけど到達には相当かかるって話は聞いてたわよ？
ある程度の日数想定も教えてもらったから、覚悟はできてたけどさ、それでもさ……

……そう。聞いていたより、遥かに城までの道のりは過酷でした。
一番楽だという平原、王城庭園エリアでさえ、そこそこ手入れされた場所こそあれど、
その他は自然そのまま。原生生物やエンブリオが大変平和に暮らしてる場所って訳よ。
当たり前のように、縄張りを荒らした私達に遭遇したら否応なく戦闘になるし、
しかも真面目に強くて油断なんて欠片もできやしないし……
魔王の手勢も居るには居るけど、これはそれ以外の障害に阻まれる一揆参加者の方が多いんじゃないの……？

ま、お陰で一般的なエンブリオ
──俗に「初期エンブリオ」と呼ばれてる、自然そのものの具現だったり、接触が非常に容易だったり、
その上気性も穏やかで、私や他の異世界人にさえ敵対せず、いつでも素直に契約に応じてくれる──
ではない、戦闘を経て力を認めさせないと契約してくれない、そうね……
「野生のエンブリオ」とでも呼ぶべきかしら。そういうエンブリオとの契約チャンスがあるのは、ある意味幸運と言えるのかも。
エンブリオとの契約と、その結びつきの強さが
身体、精神、その他の……ざっくりと総称してしまえば戦闘能力、その大半を決めるこの世界で、
初期エンブリオより強い（らしい）野生のエンブリオとの契約ができるというのはそのまま強さに、勝率に、生存率に直結するからね。

割と観光気分で来てるから意識してなかったけど、思えばこれ、ひとつの世界の覇者を決める大戦争なのよねえ……
少なくとも一度はこの世界を支配しかけ、ネクターをほぼ独占するに至った暴虐の覇王。
そしてその恐るべき魔王に反旗を翻した一揆集団。……その一員なのよね、私は。
例えこの一揆の結果がどう転んでも──例えこの世界がどうなろうとも──次元転移門さえ確保できれば、私はどうとでもなる。
とはいえ一度参加した陣営が負けるのを見たいかって言われたら、そこまで無関心にも冷酷にもなれる訳じゃないからね。
今のところ、どうしようもないってほどの危険もまだ感じてはいないし、やれる所まではこの一揆、やってやろうじゃないの。

ヴァンエッタはほころびをちまちま弄り補修している。