色彩豊かな庭園、穏やかな風の音。
ちょいとその辺りを見て来ると、離れたアイの背を見送って少し。
手入れよく整えられた垣根を背に、流れる雲を眺めていると………

虫の羽音にも似た音が耳についた。
音源を見つけようと、首を捻って辺りを見回してみるものの
視界を過ぎる影もなく、それらしい気配すらない。
けれど音は途切れがちながらも、近くに居ることを主張してくる。

虫さんが鞄の中になんて入ってなんかいたりしないわよねぇ？
そう独りごちながら、傍らに投げていた荷物入れを手繰り寄せて手を突っ込む。
ジャム、蜂蜜、果物の砂糖漬けを入れた様々な瓶。
魔鉱石、精霊石、何に使うのかわからないガラクタ。
目に付いた物から取り出し検分し、変わりないことを確かめて

指先に当たった物を引っ張り出すと、手の中には正解の品。
いつかの島で受け取った、通信機と呼ぶにはお粗末な玩具。
それでも確かに友人の声を届けていてくれたのだが
島を離れてすぐに、何も答えてはくれなくなったのだ。

暫くは何の為についているのかわからないツマミやスイッチを
押したり引いてみたりしていたのだが、諦めて鞄の奥底にしまってそのまま。

ぽつりと、懐かしい友人の名前を呼んではみるものの、通信機は答えない。
ただ虫の羽音にも、ラジオのノイズにも似た、無機質な音を発するだけだった。



---メイリーは世界通信機の存在を思い出した！▽

久しぶりに見た明るい笑顔につられたように、ほっとした笑顔を見せた。

トランクケースを開き、臙脂色の巾着袋を取り出す。
中からは様々な——飴や焼き菓子など——が出てきた。