ただ痛かったとしか言いようがない。
新しい発見は自分の語彙力がそれほど低かったということ、そして、今まで僕の指示で戦ってきたものたちは、これほどの痛みを抱えて尚僕に従っていたということだった。


気がつけば、小川の石に頭をもたせかけるようにして気を失っていた。首が酷く痛む。ドールが帽子の鍔を握って、べしべしと懸命に僕の頭を叩いている。
おそらくあの兵士は、気を失った僕を適当に川に放り込んだのだろう。命まで奪われなかったことは幸いだったが、溺れ死ぬことくらいは期待していたかもしれない。
痛む体を引きずり岸へ上がり、濡れた服を干しておく。炎のエンブリオでもいれば早く済んだのかとも思いつつ、代わりにシルフに風を出させておいた。その横で、荷物の確認をする。

「——なにこれ」

そこから出てきたのは、ぬいぐるみのような、下手なシーツお化けのような生き物だった。

ぬいぐるみを荷物から出し、服が乾くまでの間それを暫し観察してみる。
どうやらドールやシルフが友好的な態度を取っている辺り、これもエンブリオらしい。人間等身大サイズのエンブリオなんてものもいると知った今ではそうそうそれ自体では驚かないが、問題は荷物に入ったこのエンブリオが勝手にネクターを食べてしまったらしいことだった。
流されたのかとも思ったが、このエンブリオが離れない辺り、どうも契約は済んでしまったと考えた方が良さそうだ。
はあ、と溜息を一つ吐いて、
「来たからにはしっかり働きなよ、何で僕のところに来たかなんて知らないけどさ」
と声をかけてみれば、エンブリオは任せろとばかり一頭身の……胸？　を張った後、
——口を開けて、生え揃った牙を見せつけた。

ドールが頭の上から下り、次いでデビルもふわりとその後に続いた。

使えそうなものと見るや、素早く取って懐へ入れてしまう。

歩いて行く最中暫し風に吹かれている。頭上に座ったドールが左右に首を傾げる。機嫌があるなら、機嫌がよさそうに。