ヴルが魚を持って帰ってきた。
何処で捕らえてきたのだろうか。
まだ活きが良く、跳ねている鮭だった。
ヴルの顔を見ればさも誇らしそうな顔をしていたな。
最近時々どこかへ出かけているようだ。
もしかしたら狩場でも見つけたのだろうかな。
私にかと聞けばそうだと言わんばかりに吠えた。
しかしさすがに一人で食べきれるものでもないだろう。
燻製にでもすれば日持ちするかとも思ったが
厨で一切れ自分に確保したあと、残りを再びヴルの元へ持っていくことにした。
元はヴルが手に入れたものだ、私は相伴に預かった身。
あとはお前が食べれば良いと言えば
これまた嬉しそうに吠えてそのまま食べ始めた。
旺盛な食欲だ。
あれだけ体が大きければそれこそあっという間に魚はヴルの胃袋へと消えた。
美味かったか？と聞けば満足そうに鳴く。
ならば私も期待しよう。
シンプルにソテーするだけでも、十分に美味いだろう。
楽しみだ。

先日は実に苛立たしい事が起こった。
文字に起こす事でさえ、思い出し憤りを覚える程に。
それほどに腹立たしい出来事だった。
随分と久しく怒りなど感じなかったが、最近はよく顔に出ている方だと思う。
ああ、あの顔を思い出すだけでも頭痛がしそうだ。
全く腹立たしい。
しかしもう会うこともないのだろう。
いや、そう願いたいものだ。


──日記はここで終わっている。

羽をパタパタさせて嬉しそうだ。

一見、畑仕事にせいを出しているように見えるハールに声をかけ、バツの悪そうな笑顔を浮かべた。

どうにも納得がいかない表情だ。

赤い獣にそう声をかけたあと、ハールに向かってこっそりと囁く。

悪気なくカラカラと笑いながら男は対峙する獣に話しかける。

そう言うと男はにんまりと笑いながら、拳に愛用の得物を嵌め込んだ。