四日目

物心が付いた時には孤独だった。兄や姉は新しく生まれた妹に付きっ切りで、父母とはそもそもほとんど会話をした記憶が残っていない。自分が幼年であったことがその原因かもしれないが、忘れ去るくらいの会話なら無かったも同然だ。今が過去の延長線だとして、今もなお両親とはほとんど言葉を交わさないのだから。
思えば、生まれた時からそうだったらしい。らしいというのは、当時赤ん坊であった私にはその時の思い出が無いからである。
村の住人からは奇異の目で見られた。上手く制御できない魔力は多い時で日割り三桁の暴発を引き起こし、村中の人間には一通り迷惑をかけた。
友達は飼い猫のラモルトだけだった。会話が無くとも答えてくれるのは、私の回りでは彼女だけだったから。
会話の空白は、魔法の才に気づいた国軍が私を召し上げに来る10歳の夏まで続いた。

そんな過去があったらお前ももうちょっと謙虚だったかもしれないのにね、と元首に言われました。
私としてはそんなつもりは毛頭無いし、私が思うに魔法が使えるんだから参謀よりは上級だと思うんですが、だって魔法は努力じゃ得られないと思うわけで、これって間違いなんでしょうか。
特に報告する点も見当たらなかったので今日はこの辺で一つ。

Л от М
女神なる帝へ

ざ、ざざ。スズメドラゴンの周囲をあたかものどかな雰囲気が包む。

両手を広げて宙へ舞い上がり、「いよーっ」（とエンブリオが効果音をつけると同時に）隈取の似合いそうなポーズを腕脚を使ってキメてみせる。

　現れた少女の呟きと重なるように、少年は一言だけ呟いた。
　それに次いで矢継ぎ早に語られた言葉。
　相手の装束を気にも留めぬような態度で、少年は顔に微笑みを貼り付けた。

　当たり前のように、『呪術師』と名乗った少年は、ローブの胸元を片手で直しながら、呟きの中で聞こえた『名前』を呼んだ。

スズメがチワワを洗う光景が始まった