□ Day 4 ： エンブリオは語らない

　アサミは広庭を進む途中で見つけた、土でできた人形のようなものをじっと見つめていた。

　彼女は経験則から、この人形はエンブリオのゴレムに属するものだと判断し、契約を交わそうとネクターの花弁を右手で摘みながら近付いていった。しかしこのゴレム、多少動きはするが幾らこちらが反応を見せても言葉の一つも交わさない。アサミはエンブリオに花弁をちらつかせながら、契約していいのかどうかわからず次の一歩を踏み出せないでいた。

　ゴレムはメルンテーゼの共用語とは違った言語を、人が発したようなものではない音声で話した。

　ホッとしたアサミは姿勢を正し、ゴレムの右の掌にネクターの花弁を置いた。が、次の瞬間！

　これがこのエンブリオなりの契約方法のようだ。アサミは驚きのあまり言葉が出せないまま、ゴレムの観察を始めた。すると花弁を潰したときに出た微かな水分が、ゴレムの掌にどんどん吸い込まれていく。そこをそっと触ると、金属とは違った少しザラザラとした感触が伝わってくる。やはりこのゴレムは土でできている。アサミはそう確信した。

　しょうがないな、といった顔をしながらアサミはゴレムをハナガサと合流させ、この子すごいんだよー、などといった他愛もない自慢話を始めるのであった。その中でアサミは、

　……なんてことを考えていた。しつこいようだが、ニウノハラで伝えられている噂である（前々回の日記または分割世界事典参照）。

　ゴレムの名前に契約者が気付くのは、また次回のお話。

[>なぜか襲われること前提で話を進めている……

新しく加わったゴレムのスタウロの頭に乗って、固い頭をこついている。

どうやら、コミュニケーションを取ろうとしているらしい。
しかし地味にうっとおしい。

ふーむ、と言いたげに、アサミとハナガサの方を見上げた。

なにかをつついている。