極めて端的に言って、ちえり・R・アプリコットには友達というものが存在しなかった。


村には同世代の子供も多くいたが、ちえりの奇行と高慢な態度に着いていける者は誰もいなかった。
そして彼女自身も別にそれでいいと思っていたので、（上に立つ者は孤独なのだと相場が決まっている）
結果として友達を作る機会はついぞ得られなかった。

ちえりと知り合った村の子供達の反応は、概ね3パターン。

1.ドン引き
2.ごっこ遊びと思う（その後1へ）
3.からかう

それ以外では、噂を知っているので最初から近づいてこないタイプ。
総じて、ちえりが虚言癖だというのが前提の扱いだった。

翻って、一揆に参加してから知り合った人たちはどうだろう。
ちえりの言葉を疑うものも、笑うものも、誰ひとりとしていない。
周囲が濃すぎてちえり程度の個性では全く問題にもならないのだ。

家族以外に真っ当な人間関係を築けた試しのないちえりだが、ここでならもしかして？

それでも、うっすらと期待に似た感情をいだいてしまうのは、そんなに悪いことではないと思う。


一揆参戦4日目、家を飛び出してから丁度1週間が経っていた。

　ちえりの言葉に、真面目な顔をしてふんふんと頷くポポロ。
　前世の記憶。封印された力と魂。人の器。
　そして最後に「心当たりはないか」という問いに「なるほど」と呟いてみせ、うつむき加減だった顔を上げ、

　深い緑色の瞳が、ちえりを真っ直ぐに見つめている。
　ポポロの顔には、確信めいた何かを携えていた。
　そう、すなわちどや顔である。
　そして、万感の思いを込めて、ポポロは答えを口にする。

　ですよね。

　考え込むシャルロッテ
　少しの沈黙の後、口を開いた

自分と背丈の近そうな人を見つけてぱあっと表情が明るくなった様子

ぬいぐるみにぐいぐい押されて少女に近付いていく
距離が近くなれば押していたぬいぐるみを盾代わりにした

アルキメンデスは台車に乗ったガトリングを興味津々で見つめている。

感心しているちえりを見て少し誇らしそうに

そっと5〜6ｍ程の近くに寄り、周囲の匂いを嗅いで見る

色々と勘違いしているようである

　————唐突に。

　呪術師は少女の眼の前で、両手を叩いた。
　ぱちん、と。乾いた音が響く。

　ただ、それだけ。
　遮るように呪術師の口から零れ出した言葉は、一言だけだった。

　目を合わせても、そこには、薄っぺらい微笑みがあるだけで。

　顔を近付けても、大して背丈の変わらぬ躯(からだ)があるだけで。

　漸く、呪術師は、灰色の瞳を、薄く見開いた。

彼女（にしか見えない）は少しだけ首を傾げると、あなたの質問に答えるべく姿勢を正した。

スズメがチワワを洗う光景が始まった