ルーディが家に住み着いてからもう四日になる…、すっかり俺の家での生活が様になってきた。
これまでカレー以外の料理を作ることはまるで駄目だった俺も、ルーディの教えもあって作り方も色々と身についてきた。
結構手際もいいし、作る味もよくできている。こいつが食事当番の時は、おかげさまで結構助かっていた。
食材はメルンテーゼから色々と調達してきているようだが…、一体何の肉なのか、何処で採ってきた果実なのかはまだ俺も知らず。
…まぁ、肉は確実に牛や豚じゃないよなぁ…。調理前の状態は肉の色も嫌な紫色をしていた気がするし。調理した後は気にならないくらいいい色にはなったが、よく焼かないと変に紫色が残って食欲が下がりそうだっ。
何にせよこいつが色々と食材も調達したり、料理する時はまともに料理作ってくれるし、こちらとしても助かっている。これで後は、あのいつもの調子さえ少しまともになれば完璧なのだが…。
さて…今日もまた次の戦いに備え、元いた世界でごく普通の生活に。あと数時間もすれば次の戦いだが、それまではしっかりと身体も休めておきたい。
ハードな戦いが随分と続いて連日これだと身体のあちこちが痛くなりそうだが、ルーディの調合した謎い回復薬がどうにか効いているのもあって、翌日も問題なく戦えるっちゃ戦える。
…問題はその謎い回復薬の味が、青汁と非常に似ていることくらいだ。○ューサイ青汁なら昔一度口にしたことあるが、あれをもう一段階くらいか不味くしたものだろう。
ルーディはもう少し改良を重ねてみると言うが、これ以上のきつい味に仕上がったら、さすがに回復する前にどうにかなっちまうからなっ…？

つまりあれか…、次は数種類の特製回復薬を飲み比べてくれと。嫌な予感がしないでもないんだが…。
とりあえず今日も食事を終えたことだっ、食器も全部片して、洗ってしまおう。
俺が食器を洗っている間、ルーディはソファーに腰を掛けてはテレビをつける。まるで自分の家のように寛いでいるのが様になっているあたり、ホントにこれからもこの家に住み続けそうな気がする。
まぁ…助かってるし、悪くはないかもしれない。ただまぁ色々大変なことがこの先起こりそうな気がしないでもないが、こいつとの生活を繰り返してると。
しかしルーディの生まれた場所はどんなところなんだろうな…、これまで聞いた話ではこいつは俺を護る為に生み出された存在だと言っていた。
普通の生物とは異なり、何者かの手によって生み出されたことに違いはないし…、だとすると研究所みたいなところだろうか？
なんかこう…あれだっ、いかにも特撮の秘密結社の研究所みたいなところとか。あるいはSF映画さながらの研究施設とか。

俺は目の前の食器の一つ一つを洗っていき、ルーディは食器が洗い終わるまでソファーで待機している。
近くにせんべいを置いてはその一枚を口にしつつ、ごく普通にテレビを見ている。うん…すごくテンプレートな光景だ。
しかし特別何もなければ、このような光景は珍しくもない。こいつがいる分、食事は少し賑やかだけど。
これまでこの家で一人暮らしをしてきたが、こうして同居人がいるだけでも十分違いを感じる。実家にいた時も結構賑やかだったしなぁ…。
しかし実家の大きさや部屋の少なさの問題もあって弟たちとは同じ部屋。趣味に浸れる時間も減ること減ること。ギャルゲ買おうにも置く場所がないから、それまではDL版の購入が殆どだった。
そこで俺は思い切って一人暮らしを始めることにした。ちなみにこの家は一人暮らしの為にじっちゃんに買ってもらったものだ。
じっちゃんはもっと大きな家でもいいんだよと言うが、さすがにそこまで贅沢は出来ない。確かにじっちゃんの家がすげぇ金持ちなのはわかるけれども…。
こうして普通の家で普通に過ごせるのが丁度いい。まぁ…今となっては同居人が増えたり、一揆に参加することになって、趣味の時間も減ってしまったけれども。

食器を洗い終え、エプロンを近くに掛ければ、俺はルーディーのいるソファーへと向かった。
ゆっくりと隣に腰を掛けれは、まずはテーブルの上の麦茶を一口。
ルーディは何処からかスマホを出しては早速いじりだした。何か写真でも保存してあるのだろうか？

スマホに写っている写真を見るに、いかにも小さな研究所という見た目の場所である。ある程度は想像の範囲内だがそれほどこてこてしておらず、割と抑え目といった感じ。
写真には大きな試験管が写っていて、ルーディはこの中で生まれたようだ。他にもその試験管の中では別の人間に仕えるアバターも生み出されたらしく、生まれたアバターは現時点でルーディ含めて全七人存在するらしい。
今そのアバターたちがどうしているかはルーディにもわからず、彼女が生まれた頃には他のアバターたちは別の世界に行ったようである。
ちなみに近くには見知らぬ金髪の男性の写真が飾ってあった。なるほど…、想い人がいたということだろうか。

次にルーディが見せた写真は、生みの親の寝床らしい。
…何か秘密結社の手術台みたいなのきたっ！？つーか、沢山ケーブルみたいなものがあるんだが…。
えっ、つまりあれですか。SFチックな世界のお方ですか？あるいは別の用途に？

俺が気になってた写真？どういう意味だそれは…。
ルーディはスマホの画面をスライドすると、次の写真へと切り替わった。
…が、何のミスかその時の写真はとんでもないものが写っていた。

ルーディ別の写真を表示すれば、今度はちゃんと服は着ていた。随分とまぁ可愛らしいドレスである。
しかしこのなりの少女がこいつの生みの親？このロリ巨乳の少女が！？
見た感じだと身長はおそらく俺の妹よりも下だろう…、そして反則的な胸の大きさ。この身長でこのバストの大きさ…、おそろしく反則級だぞこれっ！？
さっきは風呂上りの瞬間の一枚を見てしまったが、確かにあれをみれば胸が本物であることは確か。特に合成という訳でもないようだ…、確かにそれは本物である。

画像を切り替え、今度は別の見せたらまずいであろう画像を見せるルーディ。
つーか本当にその写真、こんな使い方して怒られねぇのか？その写真、お前の生みの親なんだろ？
しかしまぁ…本当に胸でかいなぁ…。このなりの少女があのケーブルいっぱいの寝床で寝てるんだろう？
一体どんな光景が広がっているのやら…。

こいつならやりかねない…、こちらの考えることが正確に読めるあたりこいつの恐ろしいところだ。
まぁ…あくまで俺のアバターとして生まれてきた訳で、さすがに別の相手の考えてることまでは読めないみたいだけど。
それでも俺にはかなりの脅威ではある…、これが一番の。相棒にして一種のラスボスクラスの存在だ。…隙あらば硬いもので殴れば大体痛そうにしているけど。

まぁ、こんな感じでこの日も割と楽しく過ごしていた。
なんだかんだでこいつと一緒だと、翌日の一揆も結構いい感じに戦えている気がする。
こう話している中で色んなものがほぐれていくというか…、色々吐き出した後はすっきりする。
相棒とは言いがたい相棒…といったところなのだが、ちゃんと彼女なりの相棒らしいことをしてくれていたのだ。

初めこそ、こちらにとっての異国語、相手にとっての自然な言葉を使っていた相手が、突如、こちらの世界の言葉を話しだしたものだから、思わず顔をあげて素直に驚いた表情を。
これが、初めてでなく。多少言葉に違和感のある箇所こそあれど意味は確かに通じる。

意思を伝える事が出来る喜びと同時に——相手の主張は、自分だけがこの世界での異端、のように思えてしまうもので、眉尻が、少しだけ下がった。

レティは満面の笑みでルーディの頭をなでなでしている

アクスをぶんぶん振り回しつつ

きょろきょろと周りを見渡す