「わぁ、見てみて！お城が見えてきたよ！」
「分かったわかった。あまり騒ぐな。」

うっすらと朝靄のかかる、一見すれば群峰のようにも見える王城前へ、
ゆっくりとした足取りで進んでいく、ふたつの影。
かたや好奇心旺盛といったふうの一匹に対し、もう片方はそれを窘めつつ
その歩みを進めていく。



「……だけど、なんで一揆に参加するのにテストがいるんだろうね？」
気になっていたのか、小さな獣人はふと見上げて首を傾げる。

「そりゃあお前、ひ弱な奴を参加させるワケにゃいかんからだろう…」
何を今更、といった感じでグリフォンが見下ろし、ため息一つ。


───


城下町へ着いたのは、つい昨日の出来事だった。
『悪い王様をこらしめるために』という名目で村を出てきた獣人、ディルと
『あいつ一人じゃ危なっかしいから』という理由で共に旅をする事になった
グリフォンのブラン。


名目上は『一揆に参加するため』の旅なので、登録はしておかないと
色々とまずいだろう…と言う事で、加勢する旨を参謀へと伝えに来たところ

「登録するにはテストを受けてもらう」

という答えをもらったのだ。
その『テスト』を受ける為、朝も早くからここへ来た…という訳だ。


───


「さて…、どんなテストなのやら。」
目前にそびえ立つ城門を見上げ、ブランはぐるる…と唸る。

「うぅ、ボク怖いよ……ココで待っててもいい？」
不安そうな表情でちら、とブランを見上げるディル。


「別に待ってても良いが…」
軋む音を響かせながらゆっくりと開く門をくぐり、数歩奥へ進み。
ちらり、と後ろを振り返ると、からかうように。
「迷子になっても知らんぞ。」

その一言にぶわりと尻尾の毛を逆立て、涙目になりながら
慌ててブランの後を追いかけるディルであった。