気がつくと、兵士さんが男性の大事な所を両手で抑えながら地面に転がっていた。
何ていうか、それには心当たりがあるし身に覚えもある。
でも、さっきまでは、夢中で…いっぱいいっぱいで、その…………

そんなことしてやろうと思ってしたわけじゃない

…んだけど。

のんが白い目で私を見てる。

「カンナはひどいことをするな」

エンブリオだから性別ないくせに、どこかおじいちゃんに似たその姿が言うと、
ものすごい罪悪感に襲われた。

「だ、だって。私別に戦う気なんてなかったのに兵士さんが攻撃してきたから……」

正当防衛のはずなのになんでこんな言い訳じみているんだろう。


「ブ、ブランチマン様……」

声の方を向くと兵士さんがそう呟いていた。
誰の名前だろう。
そう思いながら、スカートを抑えてかがみこんで顔を覗き込む。

「あの、大丈夫ですか？」

「そんなわけないだろう」

って言ったのはのんだ。

「失礼しました。話し合いができなさそうだったものですから…。
　私は、王様に文句があるわけでも、反乱活動に参加しているわけでもありません」

のんを無視して続けると、兵士さんが目だけでこっちを見た。

「……しかしお前はエンブリオと契約しているだろう。ネクターが欲しくないわけがない」

「そんなことありません。ネクターがなくても畑仕事はできます。」

「ならば何故、こんなところにいるのだ？」

「それはその…」

なんでだろう？

「ラルフさんがいいぜ行けっていう感じでのんがこっちだって言うのにホイホイついてきた？」

口に出してから自分に失望。残念すぎる。

「す、すいません、私のエンブリオが仲間のエンブリオに会いたいって言うから来たんですけど、
　その、私すぐに帰ります」

「カンナ！」

のんが慌てて声を出す。

「だ、だって、のんは私にどうしろって言うの？
　ここまでは夢中でなんとかやってこれたけど、兵士さんに負けてたら捕まって
　牢屋に入れられてたかもしれないんだよ？」

早口にそう言うと、のんは神妙な顔で黙り込んだ。
わかってくれたのかもしれない。
のんは一揆に参加してネクターを取り戻したくても、私はそれを望んでないってことを。

のんが静かに口を開く。

「今まで悪かったよ、カンナ。
　そうだな、帰ろう。立って、カンナ」

「うん」

すっくと立ってうなづく。

と

「……っ！」

足元の、兵士さんが、私のスカートの中を、見て…

「きゃああああああああああああああああああああああ！！！！！！」

気がつくと私は必殺の拳ドリームアサルトで兵士さんをぶん殴っていた。





たぶん、もう、後戻りはできない。
のん、許さない、絶対にだ。

にこやかに語りかけてくる怪しい男。何度もお辞儀をしている。