私は招かざる客だとしても。
今回ばかりはあの子の力を借りないと、ね。

『エンちゃん、元気してるー？』
「いらっしゃいま……せん！どうしてここにいるのっ！？」

彼女の名は、飛燕・カナビイニ。
ヒエンだからエンちゃんって、誰が呼び始めたのかしら。
この子も人間のフリをしているけれど、妖精なのよね。
人間のフリをしているのには理由があって。

「あたしの前には現れないって約束したはずっ！」
『緊急事態を除いて、ね。
　かーこがピンチなのよ。だから、これは例外よ。』
「まったまたー。かーこちゃんがピンチなんて、ないない。」
『本当に？』
「うん。絶対。だって、あなたの次に強かったもの。」
『そう。じゃ、これ見て。』

このまま続けてもめんどくさいだけだから。
百聞は一見になんとかって言うじゃない？
かーこたちは兵士との戦闘中だったし、見せてみたのよ。
そしたら、何て言ったと思う？

「これ、かーこちゃんなの？」
『ええ、そうよ。次にエンちゃんは"うわっ、このかーこちゃん、弱すぎ"って言うわ。』
「うわっ、このかーこちゃん、弱すぎ……って、何言わせてるのっ！
　でも、外見変わってるけど、かーこちゃんだよね？」
『ね、ピンチでしょ？』
「だいぴんちだねー……って、一体何したのっ！？」
『異世界へ、お使いを頼んでるところ。』
「それなら弱くなるけど、でも、ここまでじゃなかったはずだよ？
　あー、負けちゃったー。」
『ちょーっと、いろいろとあってね。
　とっても、弱くなっちゃった。』
「うわー、かーこちゃんかわいそー。」

ここでそれを語る必要は無いから。
それよりも、今、すべきことは別にあるのよ。

『音声だけ向こうに繋げるけど、どうする？』
「決まってる！話すしかないじゃない！」
『はいはい、途中からねー。』




————————— SOUND ONLY　START —————————


マ『おお、かーこよ。こんなところで負けるとはなさけない。

　　ニア　あきらめない　
　　　　 　あきらめる

　　かーこは立ち上がり、再び兵士へと挑むこととなった。』

マ『あれ？ツッコミ無し？んー、流石に音声でこのネタはちゅんたにも厳しかった？
　　ま、いいわ。かーこ、ちょっと調整するから魔力止めるわねー。』
か「おー、マスター、たのん……だー…………」

マ『どしたの、ちゅんた。さっきから黙ったままで。
　　負けた理由でも聞きたいの？』
メ「ち、違うですの。」
マ『ええ、もちろんちゅんたは理解してるわよね。
　　昨日言ったばかりだし。
　　まさか、そうなるのがこんなに早いとは思わなかったけど。』
メ「言葉もないですの……。」
マ『それについては理解してるだろうし、これ以上は言わないわ。』

マ『それよりも。何か言いたいことでもあるんでしょ？
　　今ならかーこには聞こえないわよ。
　　そうそう。バナナは主食になるし、おやつには含まれないわ。』
メ「……マスター、どうして……。
　　どうしてかーこが戦わなくちゃいけないんですの！」
マ『そう。じゃ、やめる？いいわよ、それでも。』
メ「それなら、すぐにでも帰る——」
マ『——だけどね、かーことはずっとこのままかもしれないわよ。
　　これまでが最高点。
　　そこから下がることはあれど、上がることは決してなく。
　　それでも、鳴は耐えられるのかしら？』
メ「……ッ。……どうして、どうしてですの？
　　マスターの力があれば解決できるはずですの！」
マ『"それ"は、どちらのことを言っているのかしらね。
　　できるわ。けれど、できないわ。
　　何故って顔してるわね？
　　私はね、あの時の貴方たちの想いに期待したのよ。
　　ここで手を出しては、きっと、その想いすらも砕いてしまう。
　　だから、掬うことしかできないのよ。』
メ「えっ？あの時って、何のことですの……？」
マ『ちゅんたも覚えていない、か。』

マ『でも、そうね。必要なら、そのうち思い出すんじゃないかしら。
　　決して良いものばかりではないけれど。
　　ま、こんなものでしょ。調整、終わったわよ。
　　かーこ、起動！』
メ「マスター、まだ話は——」
か「……おー、おはよー。」
　「おはよ、かーこ。でも、今は夜だから違うと思うの。
　　調子はどう？」
か「んー？何か変わったのかー？」
マ『その説明の前に、サプライズがあるわ。』

マ『じゃっじゃーん！
　　ここで紹介しておくわ、時間無いけど。
　　エンちゃんよ。』
エ「かーこちゃんおひさー！
　　それと、メイちゃん？おはー！」
メ「……かーこ、知ってるの？」
か「んー、どっかで聞いたことあるかも？」
エ「がーんがーん、わ、忘れられてたーっ！」
マ『やっぱり忘れてるのね。それなら、"そうなる"わよね。
　　早めに動いて正解だったわ。』
エ「やっぱり？ね、ねね、どゆこと？分かりやすくプリーズ！」
マ『今のかーこ、記憶喪失なのよね。身体記憶などまるっと含めて。
　　だから、手伝って？』
エ「えっ？待って、ちょい待って！あたし忙しいんだよ？
　　あのひとに認めてもらうためにもっ！」
マ『ええ、知ってるわ。陰ながら応援してるし。
　　エンちゃんの記憶から複製作って、現地に送ろうと思うのよ。
　　負担もかけないし邪魔にもならない。知りたい時に情報も得られる。どう？』
エ「もう使い魔じゃないから断れるのにっ！
　　まるで驚きの高待遇のような案山子の動きを見たっ！」
メ「……かーこは動いてるですの。」
エ「気になるっ、すっごく気になるから断れないっ！ぐぬぬ、受けるしかないじゃないっ！」
マ『はい、決定ねー。
　　契約書にサインを。ささ、すぐに始めるわよ。
　　かーこ、その辺にエンブリオいる？』
か「フェアリーがいるー。」
マ『オッケー、その子にするわ。
　　エンちゃん、気になるなら後で変えてね。ほいっ！』

ヒ「…………あれ？ここは？」
エ「ちょいちょい、主さんや。あっちのあたし、幼くない？どゆこと？」
マ『今のエンちゃんだとおとなしくなってるからね。
　　かーこと行動してた頃のエンちゃん、創ってみた。
　　連携取りやすいだろうし、足りない攻撃戦力も補えるし。』
エ「なんですとー！？
　　ま、まさかの罠っ！情報得るたびにうにょうにょするかも危機っ！」
マ『ほら、"負担もかけない"って言ったじゃない。
　　エンちゃんの気が逸れないようにするという、あれよ、優しさ？』
エ「ノー、ノーノー！
　　それ絶対優しさちーがーうー！」
マ『かーこ、ちっこいエンちゃんとも繋げておいたから。
　　安定するまでちょっと時間かかると思うけどね。
　　こっちのことは気にしないで。じゃ、まったねー。』
か「おー、またなー。」
メ「……嵐でしたの。」



————————— SOUND ONLY　END —————————


メ「自己紹介したほうがいいと思うの。」

鳴も知らないみたいで。
そうなると、昔の僕が知ってるんだろうけど。
マスターもそんなこと言ってたし。
でも、うん。ま、なんとかなるよなー。

ヒ「…………zzz…………。」
か「ねてるっぽい？」
メ「それなら、起きてからするの。
　　ボクも寝るの。かーこ、おやすみ。」
か「おやすみー。明日はかとうなー。」
メ「……わかってる、ですの。勝つの。」

今日は鳴の調子もよくなかったみたいだし。
こっちのフェアリーは攻撃戦力らしいし。
明日はがんばろー、おー！