此方に来て数日。

カムヨリでは神楽舞、祈祷や地鎮祭などを主に参加していたものだが、
いざ実戦となると少し体が強張っていた。
それでもある程度は自分の能力が役に立っている、という実感もあった。

ただ、実戦の他に「練習試合」なる手合わせも経験したが、
共に行動する者達が弱っていく様を見たときのこと。

声には出さない。
いくら練習とはいえ、自分の治癒能力の現実を目の当たりにして、
幼い頃に修行していた時のことや、「ある意識」のことをぼんやりと思い出していた。

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『ねえ、どうして先代のようになりたいの？』

　ならなきゃいけないのよ。
　私は神乃に生まれた子だから。
　もっと修行をしなきゃいけないわ。

『ずっと修行してきたじゃない。…でも実際にはどう？気付いたの？』

　……どう、って…気付くって何を？　能力のこと？
　私だって神乃の子なんだから同じように出来るわよ！
　…出来る……はずよ…！

『……。　まだ気付いてない、か。　認めれば、もっと楽になるのに』

　気付いてない？何を？
　認める？何を？

『いつか、”私”を認めることができたら——』

　ねえ、貴方誰なの？
　認めるとか認めないとか…わからないわ、もう放っておいてよ…！


神乃の家系は治癒能力を生業としている。
ずっと昔から、私がこの世に生を受ける以前から。

生まれ持ったこの治癒能力を最大限に引き出し、
いずれは神乃家の上に立つ者として。
その為に幼い頃から日々修行を重ねていたけれど、
「自分の中のある意識」から目を背けるようになってから、
数年経ったある日を境に、私は修行を疎かにし始めた。

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練習であろうと実戦を想定しての手合わせ。
自分にとっては能力を試せる場でもあるのだが…。

董琉に護られてばかりでは成長しない、
自分も董琉を護らねばと心に思ったばかりだったのだが。

——自嘲、と思えるような言葉。
自分のとは思えないその小さく弱々しい声は、おそらく董琉にも聞こえていない。
いや、聞こえていたら大問題かもしれない。

あの時、意識的に目を背けた「ある意識」に対して、
今度は無意識的に改めて目を向けようとしていること。
自分自身、その「無意識」にはまだはっきりと気付いていない。