朝、彼女は昨晩書かれた日記を読んでいた。
日記の上に置いてあった花の茎に興味は無いのか近くにあったゴミ箱に投げてしまった。

しばらく頁をめくったところで小さく唸り声をだしながら考え込み、
そして考えがまとまったらしく彼女は日記をしまった。

同じ宿に泊まっている３人には声を掛けず、彼女は一人街に出た。




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街の中心から東へ行き、反時計回りに街の外周を大まかに歩く。
全部が見たいわけではないが、みられるところは視たかったのだ。



時間をかけておおよそ街を一周し、屋台で買った安っぽいサンドウィッチを栗鼠の様に頬張り、
「食べたことの無い味だ」なんてことを考えながら、この街で一番高い建物である時計塔を登っていた。

一番高いところまで来て見回せば、先ほどまで時間をかけて歩いた街が一望できる。
こうやって見ていると３０分もあれば回りきれそうなミニチュアの、おもちゃの街のようだ。
彼女はサンドウィッチの最後のひとかけらを口に頬り投げそれを呑みこみ、呟く。

もともと住んでいたであろう住民も、私たち同様よそ者の人も、
街の外で国に対して一揆をしているなんて嘘のように普通に生活している。
市場には活気があるし、酒屋では昼間っから酒を飲んでいるおじさん達がいた。


だがそれもエンブリオに支えられている生活ならやはり、
ネクターが徐々に減ってきている影響をこの街も受けるのだろう。


食料は減り、森や山が消え、最後には人も消えるんだろう。

この世界の人が死のうが、王が討たれようが彼女には関係の無いことだった。
それでも糧をもらっている以上役目は果たさなければならないらしい。

「未だに信じられないけどね・・・」

自分がこの世界にいることも実感が無い。
普通・・・とはちょっと違うけれど女子高生だったちょっと前からは考えられない。



幸い数日前にであった人たちと行動を共にできることになり、
異世界ぼっちという状態はまのがれた。

同じ学校の１つ違いの生徒２人と、別の世界から来たという冒険者。
彼らは信用できると思う、でもまだ信じることはできない。

多分3人宿で待っているだろうし、
いつまでもここにいるわけにもいかない。