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ここは空と雲が広がる風景の中にある寂れた駅のホーム。


暖かな光が差し込む待合室のベンチに黒猫の少女がいました。

流れる雲の形を指でなぞったり
暖かな日差しにまどろんだりしながら少女は待っていました。


ある日、一人の旅人がやってきました。


少女が座っているベンチを見つけると旅人は少女に

「こんにちは、黒猫のお嬢さん。　隣、いいでしょうか？」

そう旅人が問いかけると、少女は動かしていた指を止め、旅人に視線を移し

興味なさそうに再び視線を雲の海に移すと旅人が座れる様に少し位置をずれました。

旅人はありがとう。と言ってベンチに腰を下ろしました。


旅人が隣に座った事を確認すると
また少女は指で雲の形をなぞりはじめました。


少女が一人遊びをしている景色を一緒に見ながら旅人はぽつりと言いました。


「・・・列車、着ませんね」


少女は青年の呟きにそっけなく言います。


「いつもひとつしか、こないから。」


これだけ空と雲しか景色にない寂れた駅だから列車も来ないのだろう。

そうぼんやりと考えながら旅人は強張ってしまった体を伸ばし、一人遊びをしている少女を眺めながら
暖かな日差しに次第に意識を奪われていった。



どれくらい時間が経ったのだろう。



旅人が目を覚まし、慌てて辺りを見回すと

待合室の窓の前に少女が線路の遥か向こう側を指で指して立っていました。


カタンカタンと遠くから列車が走る音が聞こえてきます。


「あぁ良かった…、ちょうど列車の時間だったんですね」

旅人は胸を撫で下ろし、列車に乗るために立ち上がりました。


ベンチから立ち上がった旅人に少女はいいます。


「本当にいくの？」

少女の問いに旅人は首を傾げながら聞きました

「君は、いかないのかい？」


少女は首を横に振って旅人に答えます。


「私はここで待ってなきゃいけないから。」

そっか、と言い旅人は待合室の出口へと足を進め


そして振り返って少女に言います。

「お元気で」

少女はにっこりと微笑みながら旅人に答えます


「さようなら」




・・・・・




ここは空と雲が広がる風景の中にある寂れた駅のホーム。

暖かな光が差し込む待合室のベンチで黒猫の少女は待っていました。

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　突然あらわれた大きな白鼠は、背伸びして鼻先を向けた。