ここは灰色の大地。

地面を掘ってできた穴、その先数m。光がわずかに差し込む地下広間の奥で、がさごそと蠢く影。
リエルと、異形の者が数名。石を削って小さな祭壇をこしらえていた。
石柱を何本か周りに立て、中央部のくぼみに紫の小箱を入れる。中には小さな竜骨が入っている。
最後に上から石版をかぶせて、作業は終了した。

部下を一列に並ばせ、リエルは祭壇の前に立つ。
深く一礼し、静かに語りかける。

「…母上。
もう幾度目でしょうね、にぎやかな引っ越しになりました。今度の場所は、多種多様なものの行き交う地です。
貴方はどう思われるでしょうか、私にも珍しく友人ができました。竜の同輩もたくさんいるようですし、しばらくここで頑張ろうと思います。

母上。…あの時、まだ魔の端くれだった私に声をかけてくださったこと、そして…最期の言葉、今でも考えています。
正直、竜殺しによる“竜狩り”から生き延びられたのは、あの時点でただの魔物だったからでしょうし、私が動いても兄弟はみな笑って止めるでしょう。
それでも、それでも私は…何かをせずにはいられません。私は、今でも納得できないのです。

大地のエルダードラゴンであり、“豊穣神”の神格をもった、“地竜マカレル”。
人や、獣や…様々な種族から敬われていた貴方が、なぜ滅ばなければならなかったのか。

母上、貴方は『貴方にしかできないことを成しなさい』と仰いました。
…兄弟のような、純粋な竜にできなくて私にできること。
私は…竜殺しを滅するべきでしょうか？教えてください、母上…」

リエルはうつむく。その肩が、わずかに震えていた…。

ハサミを鳴らしている