目が見えない。


その事実を知ったのは、皮肉なことに、視力を得てからだった。


物心ついた頃には見えていなかったのだから、仕方のないことなのだろう。


私はいつも、耳を澄ませ物に触ることで辺りを探って暮らした。


だから不思議だった。


母さんはどうして、触りもせずに私をいつも探し当てられるのだろう。

ただ、不思議だったんだ。




しかし不便ではあれ不満はない。


私の世界は常に、闇とともにあったから。




*　*　*　*　*

私が10になろうという頃だった。

母さんの姉…私の伯母が村に帰ってくるという。

彼女は都心で、自警団に所属していたそうだ。



じけいだん



初めて聞く言葉だった。

それはなにかと尋ねると、悪い人をやっつける人だよ、と教えてくれた。


悪い人をやっつける？

おとぎ話のヒーローみたいだ！


母さんの話してくれるおとぎ話を思い出す。

まだ会った事のない彼女のことを思い、とてもワクワクしたことを覚えている。

声を掛けられ、釣竿から目を離す。

釣れたうなぎを見下ろし何とも言えない顔をしている。

目の前に差し出されたトウモロコシ一つで表情を変えるのが面白い。
用心棒として雇ったアデルだが、今は専らスィナンの遊び相手だ。

そう言って笑いながら、トウモロコシをアデルに手渡す。