筋肉を強調しているアルミ・カーンを見ながら小さく頷く。

せっかくだし、名前を付けてあげたいもん。とアルミ・カーンに告げていると。

ぐぅぅ〜〜

———お腹の音が鳴る。
朝ごはんをしっかり食べれて無かったのである。……主に寝坊で…夜まで身体をサラちゃんと動かしていたから何時もの時間に起きれず…中途半端な量しか食べれて無かった。

恥かしさというよりは情けなさが顔に出てしまいながら、お腹を押さえる。

そういうと、彼(？)は胸を強調するポーズを取りつつも腕を伸ばし…缶部分へと触れる。
次の瞬間、彼は缶の蓋であろう部分を外し、屈むと……何処から取り出したのだろうか…綺麗な器とスプーンを私へと差し出した。

ふと、中身を見る——。
彼の缶詰の中身は蜜柑が……入っていた。

————。
彼の忠誠心や、その言葉を聞いて……少し躊躇していた自分を恥じる。
彼のその言葉に応えるのが契約した者として、当然の事だろう……彼に此処までさせて食さないのは——ファンの期待に応えられないのと同等の事である。

スプーンを使い、器に少し蜜柑を移していく。
既に、器から香る匂い……昔、風邪を引いた時などに食べた蜜柑の缶詰の事を思い出してしまう。
——弱った時に、何時も食べていた蜜柑の缶詰——。

「———いただきます———」

感謝の言葉として、彼に告げてから私はスプーンで蜜柑を一つ掬い上げて口の中へと運ぶ。
口に含み、スプーンを使い舌の上に蜜柑を乗せ……ゆっくりとスプーンを口の中から、引き抜いた。

その蜜柑を歯で噛み潰すと、口の中に爽やかな甘みが広がっていく。
咀嚼をする度に、口内へと甘みが更に増して広がっていくようなそんな感覚——。
——ごくん。と…飲み込んでから口を開いて真っ先に出た言葉は……。

単純だが、今の気持ちを表現するのに一番ふさわしい言葉だろう。

物凄く簡単な名前、アルミ・カーンだからでもあるし、蜜柑が入っていた缶だからという理由でしかないけれど。

がっしりと握手を交わし、互いの友情を深め合う私達。

…アルラさんに呆れられてるとも知らず、時間が過ぎていくのだった——。