今回は初めての攻城戦ということで、猫と粘液を相手にすることになった。猫がまた容姿にそぐわず凶暴である。こいつがまた強力に突進したりひっかいてくるのだ。しかしこちらも戦闘のプロだ。その攻撃も軽くいなす。

　エルはいま前線から少し離れた所に陣取り魔法で支援をしていた。どうやら当たる魔法と当たりにくい魔法があるらしい。この世界の魔法律はだいたい分かってきた。しかしこの世界の魔法は非常に疲れるのだ。

　魔法の刃をひょいひょいと飛ばしながら、エルはこの広い庭園を見渡していた。なかなか楽な仕事だが、いい加減お腹が空いてきた……そこへ、悪霊が何か緑色の玉を持ってくる。

「お前……僕のために果物を持ってきてくれたのか。やっと僕の言うことが……」
「ひひひひ」

　さっそく緑の玉を受け取り頬張る。

「うぐっ、ぐえ、げはっ！　なんだこれ、ど、毒だ……！」
「いひっ」

　急いで食べたそれは奇妙な粘液だった。毒のようなものが激しくエルの身を苛む。仲間がそれに気付き、それは敵だと告げる。

「この粘液、敵だったか、くそ」

　逃げていく緑の塊に魔法の刃を連射する。戦闘には勝てたが、少々恥ずかしいところを見せてしまった。エルは悪霊を睨み、小声でささやく。

「きさま、きさまのせいで少し恥をかいてしまったではないか」
「ひひひひひ」

　それでもエルは背筋を伸ばし何食わぬ顔で仲間の苦労をねぎらった。そう、ちょっと恥ずかしいことをしても、エルは誇り高き魔法使いなのだから。

ふわりと揺れたオレンジの尻尾に髪、爛々と光る鈍い橙が見つめている。
部分的には動物のソレだが、人間の体にそれが付着している。
どうやらハリボテではないようだ…。

その横で小さな緑色が縦に揺れた。

そういって猫人の兄妹は自己紹介を済ませた。

ミケが小首をかしげている
　

ゆらりと大物差しを持ち上げた！