目が覚めたら僕はどこぞのベッドで寝かされていた。

見知らぬ部屋、綺麗なベッド。
窓の外からはそよそよと気持ちの良い風が吹いてくる。
身を乗り出して外の様子を伺う。
周りは木ばかりだが微かに水の流れの音が聞こえてくる。川が近い。
そのせいか、妙にここは涼しくて気持ちのよい風が吹き込んでいた。





どうやらここは森の中の教会のような建物みたいだ。

ああ、そうか、ボクはあの赤毛の少年にのされてしまったのだ。
のされた上にここに運ばれて、どうやら介抱されてしまったということか。

とりあえずボクはベッドの上でのた打ち回る。

ベッドから飛び起きて傍らに置いてあったボクの剣をとる。
見つけ出して改めてぶっ飛ばしてやる！！
部屋を出ようとバンと扉を開けると・・・。

どうやら教会のシスターらしい。鉢合わせてしまった。
手にはタオルや着替えを持っている。どうやらボクを介抱してくれてたみたいだ。

そう言うやいなや彼女はトントンと階段を下りていってしまった。

思わず畏まってしまった。違うだろ！ボク！！



一階の食堂のようなところに通される。
食卓の上にはスープとパンの慎ましやかな食事が用意されていた。

こんな貧相な料理、貴族のボクからしたらとても食指の動くものではないのだが・・・
如何せん腹ペコだった。一文無しで追い剥ぎまでしたくらいだからまぁ当然だよね。

ボクがスプーンをとってスープに手をつけようとしたが・・・。

この日、ボクは生まれて初めて十字を切った。



食事は意外なほどに美味しかった。
こんな質素な食材でもきちんと調理すればこんなに食べれるものなのか。
何より、空腹の状態でとる食事がこんなに素晴らしいものだと初めて知った。

粛清の任務のことは当然秘密。
なので、普通のことを言ったつもりなんだけどシスターは愕然とした顔をしていた。

食事が美味しくてすっかり忘れてた。
ボクは席を立ち上がって周りを見渡す。

マリアは激昂したボクを制してこういった。とりあえずマリアに当たってもしょうがないのでボクは黙って席につく。

すごく当たり前のことを言われてしまった。なんて平和な人なんだ。

なんて恥ずかしい人だ。聴いてるこっちが照れくさくなってしまう。

う〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

どうっにも調子狂ってしまうね。この人は。

まぁタリスベル教の施設みたいだし、『穢れ』の除去法を探していく上で、何か手掛かりがないとも限らないし。
・・・数日くらいならいてもいいかな。

それに、まあ、嫌いじゃないよ。この人のことは。

ふと一人の青年が振り向く。それは背後の人の気配を察したごく当たり前の反応だった。青年が口を半開きにし、呆然と立ち尽くすまでは。

見たところ随分と年下の少女を前に、何故言葉も出ずに立ち尽くすのか。ただただ見とれるばかりで自問すら満足に出来ぬ青年は、直感的に、それは少女の深奥で脈打つ何かの輝きに引かれたのだと悟る。

つと、視線が合う。失礼にも、相手の容姿を長々と見つめるという己が行為に赤面し、何か言わねばと慌てて口を開いた。

そして、口をついて出た言葉を後悔したのだった。
青年は思う。
これでは完全にお馬鹿な変人ではないかと。

右手を前に出し、握手を求める