おじさんとわかれたつぎの日、さっそく猫はおしろのほうへむかってすすんでいきました。
きのうのさびしい気もちもすっかりきりかわってうきうき気ぶん、あしどりもかろやかです。

ずんずんあるいていくと、おしろのほうからながれるきれいなおがわを見つけました。
おがわのみずはきれいにすんでいて、きらきらとしています。
くうきもひんやりとしていて、気もちのいいかぜがやさしくふいています。

あんまり気もちがいいものだから、おがわのちかくのいわにこしかけてひとやすみ。
まるでえんそくのようです。

ひといきついたあとにこれからどちらへすすもうかとかんがえた猫。
とりあえずしばらくはそのおがわにそってあるいていくことにしました。










とちゅう、猫はおがわのなかほどにたたずむひとかげ（？）を見つけました。

それはきれいなおんなのひとにさかなのようなヒレをもったすがたをしていました。
にんぎょ、とよばれるものによくにています。

猫はおもいきってこえをかけてみましたが、にんぎょのたいどはつれないものでした。
でも猫はめげません。

にんぎょはとてもすてきなうたをうたうといわれています。
猫はじぶんがかったらうたをうたってくれるようおねがいして、にんぎょにいどみました。










あたりにひびくすきとおったようなうつくしいこえ。
しょうぶにかった猫はやくそくどおりうたをせがみ、にんぎょもしぶしぶといったようすでしたが、やくそくはきちんとまもるせいかくのようで、猫のおねがいをききいれました。

そのうたごえがあまりにすてきなものだったので、猫はにんぎょになにかおれいがしたくなりましたが、あいにくよいものはうかびません。

けっきょくよいかんがえはおもいうかばず、じぶんのもちものでいちばんきれいなもの——ネクターのはなびらをあげることにしました。
けれども猫がさしだしたはなびらを見てにんぎょは目を見ひらいておどろきます。


にんぎょは、じつはマーメイドとよばれるいちぞくのエンブリオだったのです。
知らなかったこととはいえ、ネクターのはなびらをわたした猫はにんぎょとけいやくをかわすことになりました。
猫がのぞむときにちからをかしてくれるというあらたなやくそくをかわし、猫はさきへとすすみます。









そのさきまちかまえていたのは——

40cmほどの大きさの人形がゆっくりと二足歩行で近づいてくる。

スカートの裾をつまみ一礼。

首を傾げた人形が急に宙へと持ち上げられる。
つまみ上げたのは、身長は170前後、青髪の耳長。

と書かれたボードを手にもちながらやれやれといったようすでかまえました。

と書かれたボードを手にもってフフンとふてきにわらいました。