拝啓、お師匠様。

可能性の中に不可能性を含む。
あるいは含まない。

可能性が無限ならば、不可能性は有限なのでしょうか。
無限という言葉を口にしたり、文字にすることで、私達は簡単に世界を操作することができます。

なぜなら、無限という概念を文字にした瞬間、無限はその文字で表現されうるものでしかなくなってしまうからです。
無限概念についての、よくある矛盾。

無限と有限が一対である証拠。
無限を有限に失墜させる証拠。

ひっついている証拠？


矛盾がありふれているということ。
それは矛盾しない。

矛盾は綻びなのでしょうか。
錠であるのかもしれません。
錠のかけられた綻びなのかもしれません。

矛盾を突破すれば、矛盾でなくなる。
矛と盾は一対でなくなる。

ずっと一緒だった矛と盾は、一対でなくなったら寂しいかもしれませんね。

お師匠様も寂しさを感じることは……なさそうですね。
どんなことでも楽しんでしまいそうですから。
面と向かってこんなことを言ったら怒られそうですから、文字にだけ残しておきましょう。

私も、今は寂しくありませんよ。
幸いにして、頼もしい仲間に恵まれましたから。

この世界でもやっていけそうです。

そうそう、新たな出会いと共に、懐かしい出会いもありました———

正面に若い男性の後姿が見える。横顔はどことなくあどけない。灰白色の髪が特徴的だった。

背の高い女性が、あなたに声をかけてきた。少しだけ高く、ややハスキーな声だ。

　　　　　　　困ったように地面に視線を落としては後頭部を掻く

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。