緊張。一瞬、筋肉が強張った。
言い知れぬ恐怖感に一度身が幻影のようにうつろいだ気さえする。
紫水晶の眼はさっくんこと災厄を見つめ、生唾を飲んで、視線は僅かに一巡する。額からの発汗器官は良好に作動中。つらりと流れる塩の体液。
溜めに溜めたあなたの言と、傍らにいる魔眼。偽の足元で大あくびをしている猫を尻目に、ついにその答えを……。

「……は？」

超フランクな物言いにコケそうになった。

「何言ってんだこのボロ布…………こほん」

咳払い。

「要領を得ない……突拍子もない質問、とは……理解していますが、あなたのことをよく知らない、ので……こういう意味深な問いしか、できませんでした。中に誰かいるのか、それとも…いないのか、あなたも……分からないとあらば、第三者たる私が確かめても、良いかと思いましたが。
　名前……名前。私、は偽(ギ)と云います。ギィでもギーでもなく、ギです。」

胸に手を当て自己紹介。

「……血肉と、植物の種と根が這いずっています」

そうして問われた事には、正直に答えて見た。