平原進む中で聞こえる小さな羽音。
聞き慣れたこの音は…

やっぱりあった！
道の脇の樹に張り付いたハチの巣。
それもミツバチ！

そーっと怒らせないように巣に近づいて…

ペリッ

端っこをちょっとはがして安全なところまでダッシュ！

やっぱりとれたてはおいしいね。

でも…

そういうと仲間の方を振り向き…

「はい、よろしく……お願いします」
差し出された手を取り握手を交わす。しかして、こう、やはりクマ耳を生やした生物というのはもの珍しく思えた。ややあってぼぅっとしかけた頭を僅かに振るい、

「お花屋……一応そうです、ね。今は休業中ですが。
　『別世界』と云ってここは通じるのでしょうか、……私は違う世界から渡って来たん、です。そこでは、花屋をしていました」

もっとも、香る理由はもっと別にあるのだが。
ミィナにちょいちょいと指で誘う。軽く屈めて、自分の手を裏表、何度か見せてやる。

「私、植物を自在に出せるんです」

そう言うや否や、裏にした手を表にした時、藤色のライラックの花が彼女の手元に握られていた。

ミィナのあいさつに対して深々と頭を下げ、あいさつを返す。

彼女の周りに近づくと少しひんやりとしているのが感じ取れるだろう。