酒を酌み交わす夜に小川を仰ぎ見、薄ら光り揺れるその川面を眺めている。
思えば遠くまできたものだ。　途切れ途切れの過去を振り返ると同時に
いつしか年月の経過に思いを馳せていた。

一人で旅を始めてもう１０年経つろうか。
己は成長し、強くもなった。
見聞も広め、知己も増えた。それがすべて抜け落ちたような喪失感さえ感じる現在である。

当初荒れ果てた土地であると思っていたが、そうでもないようだと知るのは直ぐの事
どこまでも続くような平原、鬱蒼と茂る森々、遠くには岩肌の露出した山岳が見える。
…そしてここ、静かに流れ続ける水辺もまた豊穣の地を思わせるには十分であった。

火照った体躯に思考を鈍らせ今日は眠りにつこうと手に入れたばかりのＰＳで仕入れた米酒を煽る。
集めた情報を羊皮紙にまとめ、サラサラと書き進めた手も止まる。
明日はどこへ行こうか？と思考を逡巡させたのち、一箇所に軽く丸をつけた

「護りの森」と呼ばれる地　　そこには何が待っているのだろうか。

頭を振りながら起き上がる…

少女と二匹の異形がこちらを見てぎゃあぎゃあと騒いでいる……。

包帯の巻かれた手に視線を落とす。