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サクラ・エゾヤマ

　錬金術を学んでる１６歳の少女。
　「異世界に飛ばされてきた2人の日本人を帰還させる」という卒業試験に挑みいろんな世界を渡り歩いている最中だったが、
　師であり初恋の相手でもあるレイヤ（Eno.459）が昔の錬金術の実験の影響でもう余命幾ばくもない事実を知り、卒業試験を放棄し
　レイヤの命を救う為の研究を行うと決心した。
　しかしレイヤを救う為の薬はレイヤでも二度は作れない程に高度な知識と技術を要する。
　昼夜問わずに研究を続け、焦りも相まってサクラは心身共に疲労気味の様だ…
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あたし達が辿り着いた先は川辺だった。
美しく涼しげなその場所を探索していると、カムイさんが水浴びを提案してきた。
灘さんの水着が見たいとかどうとかでカムイさんと灘さんが喚き合っていると、セツカさんが半ば呆れた様に「暑いので少しくらいなら…」と話を纏める。

今はみんな、あたしの研究を中心に動いてくれている。
つまりこういう場合、最終的な決定権はあたしに委ねられる。
誰かが言い出し決まったルールではないが暗黙の了解の様なものだった。

みなさんが涼む分には何の意義も勿論ない。
ただ、あたし自身はあまり遊んでいる暇は無い。
けれど、先日ウルドに言われた言葉があたしの脳裏を横切る。

　─ずっとアトリエに篭りっきりだと参っちゃうよ？
　─たまには息抜きに、遊びに出掛けたりしようね
　─気分転換で新しいアイデアが生まれたり、この世界の新しい発見もあるかも知れないし！

実際にこの炎天下の中では勉強や実験も捗らない。
でも…でも…

「そうですねぇ…涼むぐらいなら…レイヤ先生、どうしますか？」

あたしは迷いながらレイヤ先生の方をちらりと見てつぶやいた。
するとレイヤ先生は頷き、言う。

「ふむ、息抜きに少し涼むぐらいならいいのではないか？なんなら、水着ぐらい作ってやるぞ。ありがたく思え。」

後半は丁重に辞退してあたしは即興で自分達の水着を調合した。

　　　：

ユカラ君とマグちゃんは昔作られた傷跡が身体に多いらしく、水浴びを辞退してきた。
二人とも事情を知られている知られてないに関わらず身体を露出する事に大きな抵抗があるらしい。
でもせっかくだから、とマグちゃんは傷のある背中をがっちりとカバーしたスーツの様なものに身を包み水面に飛び込んだ様だ。
ユカラ君はレイヤ先生から聞いた話では上半身だけにとどまらず二の腕や太腿の辺りまで傷があるらしく、
あれだけ懐いているセツカさんにも見せたがらないそうだ。
そんなユカラ君とセツカさんは日陰で荷物番をしながら、うさ耳だけを水上に出し泳ぐ（？）マグちゃんに声をかけていた。

羽織っているパーカーを毟り取って来たらしいカムイさんを撃退した灘さん、そしてウルドと一緒にあたしは水浴びをしている。
飲み物を取りに川から一旦上がると、セツカさん達の近くに座り水面を眺めるレイヤ先生が目に入った。
あたしはレイヤ先生に近寄り声をかける。

「レイヤ先生は水辺に行かないんですか？」
「うむ、まあ水着を着ているわけでもないからな…」

一瞬こっちを見るが、すぐにレイヤ先生はあたしから顔を逸らす。
その横顔はいつもより紅が差していた。
身体の弱い人だ、もしや体調が悪いのではと不安な心があたしの中に沸く。

「レイヤ先生？ちょっと顔が赤いですけど…熱射病とかですか！？大丈夫ですか！？」
「いや、違う。違うから大丈夫だ。近い。良いから、お前はウルドや兵庫とでも遊んでろ。もしくはあそこの水着着たウサギの着ぐるみでも沈めていろ。」

レイヤ先生に制され戸惑っていると、背後から野太い男の声とマグちゃんの悲鳴が聞こえてきた。

「─！」

咄嗟にそちらを見ると、上半身を腕で隠しながら身体を震わせ喚いている水着姿の兵士が目に飛び込んできた。

「き…、貴様あぁぁ！！兵士の休息を狙うとは卑怯なッ！！」
「ふぇぇ！？」

変なものに遭遇してテンパっているマグちゃんは水上に顔だけ出して硬直している。
セツカさんが真っ先に剣を抜き駆け出した。
続いてユカラ君やウルドも駆け寄っていく。
あたしもすぐに…と動き出した時、レイヤ先生があたしの肩に自分の外套を羽織らせた。

「…少しはマシだろう。良いから、着ておけ。…では、あの汚物どもをぶちのめすぞ。」

マグちゃんに変なものを見せた罪は重たい…レイヤ先生の目はそう言っているかの様だった。

ユカラさんの頭わしわしと撫でようと、更に視線に気付き

キリッとした顔でユカラさんに尻尾差し出した

…………。沈黙、深呼吸して何とか、少し落ち着いた様だ。

訂正、やっぱりまだぜんぜん落ち着いていないようだ。