霧の中で少女が叫ぶ。

【叫ばない】


彼女は歪みを正さなかった。

【正した】



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メルンテーゼを訪れさせられて、三日目の朝。


……なにか夢を見た気がする、けれど、あまり覚えてない。




「なんていうか………」

昨日戦った人間と魔法使いとかかしと……よくわからない何かのことを思い出しながら。

「あれ、なんだったのかしら……」




「まぁいいや」


それにしてもいつ帰れるんだろう。

ふとあなたの後ろにそれは立っていた。
だが殺気を放出したわけでも敵意をむき出しにしたわけでもない。単純な好奇を向けた眼が"突然"あなたの後ろに現れた。

劇的めいた口上を思わせる口振りで、楽しげにそれは笑っていた。

唐突に話しかけられても、さほど驚く様子もなく。
足を止め、振り返らずにそう返す。
相手が話を続けるのを見れば、振り返って。

——私と同じ様なモノか——
確証があるわけではないが、少女は多分そうだろうと思っていたし、多分相手も同じ様に考えているのだろうと思っていた。

代価として何かを求める事はしなかった。
臆せず話す辺り、かなり気は強い方なのだろうが、その一方でかなりのお人好しでもあるらしい。

メモを取りながら、それはもう事細かにメィレーの世界における魔法について質問を重ねるのであった。
…それはもう、楽しそうな顔で。

そう言って、少年は少女の前から立ち去ろうとする。

声をかけられそちらを向く。メィレーに気が付いて。

アニマの頭を、よしよし、と撫でて。それからメィレーを見上げる。

　声を掛けられれば、些か驚いたように、隣の女性に目を移した。

　それから、唐突に言われた言葉に、

　エンブリオのことを言ったのだろう、強い味方と聞けば、杖の先端に留まるウルヘアを見た。

右目で、『それ』を視る。
それは、呪い。右目のもの、同質、いや、それ以上の、『塊』。
————まるで、この世の、全ての悪意。