私の肩を我が物顔で占拠するものがある。
それがアズゥだ。
これは私のエンブリオだ。
思わぬ形で契約となったものだが、その見目は雛鳥のようで
庇護欲をそそるものだった。
常に私の側を離れない。
ヴルも確かに側に在るものではあるが、あれは落ち着きが足りない。
すぐに蝶を追って何処かに駆けてしまう。
気が済めば戻ってはくるのだが。
あれは目立つのだ。色もそうだが、その姿形が。
初めて見る者は驚くだろう。
しかしそれも多くの人の中に紛れてしまえば例えその成りが
どうであろうと探しだすのに苦労する。

私はあれをヴルと呼ぶが
ヴェルメリオと名を崩さずに呼ぶことがある。
それはヴルを叱る時だ。
公私を分ける、というわけではないのだが
その名を呼ぶときは私が真に怒っているということを示している。
そう呼ばれた時、あれはすぐに理解できるのだろう
ひどく落ち込んだような仕草を見せる。
それで反省すればもっと良いのだろうが
暫くするとあれはまた忘れて似たようなことを繰り返す。
ああ、書いているだけで疲れてくるな。
とにかく、つい先日もヴルを叱ったところだ。
アズゥならばそういった事もないのだが。
何せアズゥは小さい、私の肩を止まり木代わりにしているくらいだ。
アズゥとヴルを比べるのは無意味だとは思うが。
だがどうにも
アズゥの方がしっかりとした性格のように思える。
2匹とも好奇心が旺盛なのは似たもの同士に思うが
ヴルに関してはもう少し落ち着きを持ってもらいたい。

私の肩に止まっているのが気になるのかヴルはよくアズゥにちょっかいをかける。
その度にアズゥも小さな羽でパタパタと飛び回って逃げるのだが
小さいせいだろうか、すぐに地面に降りてしまう。
そこへヴルが手を出そうとするのだから困ったものだ。
力の加減は知っていようが、大きさが違いすぎる。
その度にヴルの手が伸びる前にアズゥを回収し、事なきを得る。
もちろん悪気がないのはわかっている。
そこで本気で叱るほど私も器量が小さいわけではない。
しかしお互いに懲りていないのか何度もこれを繰り返されるのだ。
正直、私は疲れた。
せめて言葉が分かれば、と思う事もある。
言い分を聞けば解決出来る事もあるだろうにな。
難しい話だ。

だが結局2匹に甘えられると、それもどうでも良くなってしまう事もある。
随分と絆されてしまったものだ。


ヴルとアズゥが来てから、私は多少なりとも変われているだろうか。

地面の匂いを嗅いでいる。

羽をぱたぱたさせている。