——いた。

応戦しているのは女性が二人。対するのはネコ型メカ・・・ではなくてネコ形態のエンブリオと、ゲル状の魔物

だ。ゲル状の魔物が一人に飛び掛かろうとしていた。


「・・・スプラッシユ！」


　同じ水属性相手ではあまり効かないだろうが、取り敢えず唱えた先ほどの術で相手を牽制する。ゲルが弾き返

されて少し離れた場所に落ち、わだかまる。

鎌を構えた女性がこちらを振り返った。


「助かります！」

「援護を頼みます・・・！」


　二人の戦い方を見ると、どちらかと言えば援護向けの技が多いようだ。せめて攻撃に優れた仲間がもう一人い

れば心強いのだが。

「——ディム！」

　とにかく確実に削っていくしかない。水属性の術で、ケットシーの動きを止めたところにもう一人の技が決ま

った。

　だが、こちらの魔力にも余裕はない。数は向こうの方が多いため、こちらの攻撃がやんだところを畳み掛けら

れては堪らない。なんとか事態を打開できないものか・・・

　考えながら詠唱していた術を放とうとしたとき、間に割っているように何かが着弾した。・・・いや、何者か

の物理攻撃だ。風が止んだところに立っていたのは、上背のあるがっしりとした体格の・・・おそらくラルフよ

りもいいだろう・・・男だった。その太い声が、我々には心強かった。


「加勢しようっ！」


　戦況が一気にこちらに有利になったのは、言うまでも無い。男は修行僧のような独特な出で立ちだが、魔術で

はなく圧倒的な力で敵を制していた。最後のアメーバが地面に吸い込まれるように消えていったのを見届けて、

私たちはようやく肩の力を抜いた。


「助かった。礼を言う」


　鞭を片手に戦っていた女性が、ややぶっきらぼうにそう口を開いた。・・・どこかで会ったことがあるように

感じるのは気のせいだろうか・・・あるいはそれは、彼女に闇属性の力を感じたからだろうか。


「いえ、お礼でしたら、こちらの方に」


　先ほど加勢した男を振り返ると、男は首を横に振って言った。


「なに、私は大したことはしていない。それよりも、３人とも怪我はないか？」


　その謙虚な姿勢と気遣いが好ましかった。鎌を持って戦っていた女性は何度も頭を下げてお礼を言った。


「本当にありがとうございました。私たちではどうなっていたか・・・あ、申し遅れました、私はシイナって言

います」

「私はヨミ、だ」

「あの、それで・・・こんなところにいると言う事は、お二人とも一揆に参加してらっしゃるんですよね？折角

ですから、一緒に行きませんか？」


　ここで会ったのも、何かの縁なのかもしれない。私としても、この世界での力の使い方に慣れていないので、

彼女の申し出は有り難かった。もう一人の女性・・・ヨミも、後ろで頷いた。


「それは私としても有り難いですね。こちらの世界は初めてなものですから」

「私も構わんぞ。その方が楽しそうだからな」

「では、交渉成立だな」


　　ヨミが歩み寄り、私たち４人は改めて向き合う。


「私はこことは別の分割世界から来た召喚師のデルタと言います」

「和尚だ。よろしく頼む」

　——和むのもいいが、ここが敵地だと言うことを忘れるな、デルタ


　さっそく自己紹介、という流れになったのも束の間、どこからとも無く聞こえたクロウの声に、３人はそれぞ

れに反応する。それが自分の召喚獣の声だということを説明しようとする前に、私たちは”敵”に遭遇した。


「やはり来たか、この虫けらどもめ！！」

「馬鹿どもにはここで消えてもらおう！」


　軽装をした・・・だが、明らかに戦い慣れをした様子の兵たちが、武器を構えて向かってきた。


「——台詞は三流以下。演出は三下以下だな」


　ヨミの冷めた・・・だが真実に近い呟きが聞こえたのか否か、雄たけびを上げながら兵士たちは迫ってきた。

——その数、４人。

さて・・・どうする？



to be continued...