「ぼく」の日記

なりゆきではじまったぼくたちの一揆ですが、やることはいつもと変わらないようで。
一番進みやすそうな道筋を選んで、ただただ前進してゆくだけみたいでした。
それにしても、このお城はとても広いです。お城というか、城壁の中に町がまるまる入っているような。
先の見えない広さ、なんだか気が遠くなるような遠さ。めまいがしそうで、困ります。
「ええじゃないか」は、ぼくと違ってとてもうれしそうに見えますけど。
基本的に、暴れたり、動き回ったりすることが好きで好きでしかたないみたいなので、しょうがないかな……
もともとは、そういう人たちじゃ、なかったはずなんだけどなあ。
あ、「ええじゃないか」というのは、ぼくたちのことを示す言葉らしいです。
「きょうじゅ」が、教えてくれました。そういう風に、名前をつけてみたよ、と言われました。
ぼくにとってはぼくたちでも、他の人からは名前がないと呼びにくいみたいで。それは、考えてみれば当たり前のことですし。
だから、ぼくたちは「ええじゃないか」、みたいです。
……正確には、ぼく以外のぼくたちが、「ええじゃないか」みたいです。
元々は一人ひとりに名前があったはずなのですけれど、今はみんなで「ええじゃないか」ということですね。
かくいうぼくは、もともと名前なんてないんですけども。
それでもいまは、「ええじゃないか」の一員であり、また「ぼく」という個人だったりで。
ええ、がんばっています。がんばっていますよ。
もう少しふつうにしゃべれる人が増えると、もっといろいろがんばれると思うんだけどなあ。
最近は「きょうじゅ」もあまり見ないし、ちょっと困ります。
そういえば、最近出会ったお人形さんと女の人は、とっても頼りになります。
進む途中で襲ってきた、ねばねばとか、ねこさんとか、あっという間にやっつけてしまいました。
「ええじゃないか」とちがって、動きがとってもなめらかで、あっちの方がよっぽど踊ってるみたいだなあ、と。
ふつうにしゃべってくれるし、仲良くしてくれるとうれしいなあ。とっても期待しています。


・今日のかみさま
今日のかみさまは、とても機嫌が悪そうでした。顔は、いつもみたいに笑っていたけれど。
そもそもぼくはかみさまが笑っていないときをしらないので、顔では判断できないと思います。
原っぱを進んでいるときに、兵隊さんがいきなり怒鳴ってきたときも、かみさまは笑ってました。
笑っては、いたけれど。
ああ、なんだろう。この兵隊さん、きっと。
かわいそうなことに、なるんじゃないかなあって。
そんな風に思っちゃうような、笑いだった気がします。



「教授」の日記
本日も晴天快晴、「ええじゃないか」の動きにも変わりなし。
先日の現地人との接触後、明確に「ええじゃないか」は目的の遂行に向けて行動を開始したように思われる。
この場合の目的が、現地人の目的と合致するものか、それとも別のものかは不明。
とにもかくにも、「ええじゃないか」が一つの目的に向けての行動を継続させること自体が極めて稀であり、
今後の活動を注意深く観測する必要があると判断する。
推測に過ぎないが、「ええじゃないか」に外部因子……私のような、自由意思を持つ
個体が新たに加わったことが、何らかの刺激を与える要因となったのではないだろうか。
注目すべきは、私のときも、新たにやってきた彼等のときも、その仲介に「ぼく」が関わっていることである。
彼そのものの行動についても、より注視していかなければならないと考える次第。