まずは動かなければ、何も始まらない。
行動力だけで生きてきたから、一揆だとかいう団体行動になっても、そのスタンスを変えるつもりはなかった。
とはいえ、ただの独断で進むだけも愚策。まずはじめはと、人かたまりの後ろをひょいひょいとついてきたところ。

だだっ広い、と称するが正しいだろう草原。茂みと葉の寂しい木が少しあるかそこら、といった程度で、他に視界を遮るものは笑えるほどいる人、人、人ばかり。
いや、人でないものも多くいる。それはまあ、いい。今は「同士」とでも呼べばいいのか。

きょろきょろと忙しなく、肩のあたりで視線が動く。
これほどの人混みに来るのは、そうとう久しぶりでもあったから、落ち着かないのだろう。
それに、見ればお仲間だらけ。

肩にいるこいつは喋らない。意思の疎通は問題ないし、それならいっそ下手に喋らないほうが都合がいいと思ってきた。
だが、これだけエンブリオとの契約者が多いとなると話は別だ。個々の認識に、視覚以外にもう少し他の手段が必要そうだ。

その場でくるり、と妖精が回る。短い両手を天に上げて、全身で喜んでいる。
そんなにいいもんかね、とは思うが、いいらしいからいいのだろう。
さて、しかし、これだけ人がいれば、まず何が起きても我先にと自分が第一陣を切る必要はない。
そういうのが好きな奴が、意気込み勇んで駆けていくだろう。

手の中でボール遊ばせて、手頃に立っていた一本幹の根元に座り込み、背を預けた。

40cmほどの大きさの人形がゆっくりと二足歩行で近づいてくる。

スカートの裾をつまみ一礼。

首を傾げた人形が急に宙へと持ち上げられる。
つまみ上げたのは、身長は170前後、青髪の耳長。

かくれているつもりでも、あほ毛がちょろっとはみだしてたなんて。
わたしはきづきもしないのです。

白い毛をした動物が威嚇している。