僕は案山子。
マスターや鳴からは、かーこって呼ばれてる。
他にもあるけど、ま、それはいいのかな？うん。

マスターのところでは古株らしい。
使えはじめたときは、別の古株もいっぱいいたみたいだけど。
……その、なんだ。
よく、おぼえていないんだ。
体を新しくしたときの影響じゃないかって、マスターは言ってた。
最初、鳴はそのことでマスターにいろいろと言ってたみたいだけど。
とつぜん、その話題にふれなくなった。
きいてみたんだけど。
「いいの。かーこはかーこなの。」って。
そういうものらしい。
僕もマスターに直せないかきいてみたんだけど。
『えーっ？そりゃ出来るけど、今の方が面白いわよっ？
　ふふっ、だいじょーぶだいじょーぶっ♪きっとたのしいことになるからっ♪』って。
そういうものらしい。


そんなこんなで、12年。
鳴が僕のサポートについてから、12年。
この体になって、初めての異世界。……と思う。
まー、お使いはいつものことだし。
なんとかなるかなーって思ってる。
『それ』はいつの間にか入れかえられてるみたいだし。
しばらくはうまく動けないかもだけど。
なんとなくがんばる。
たぶん、それでいいんだって。
約束になかったし。

なんて考えてたら。
マスターから一方的な通信が届いてた。

『ちゅんたには感謝しなさいよー？』
うん、わかってる。
それはちゃんと、わかってる。
『この旅が、きっかけになるといいわね。』
こっちは何だろう？
思い出すきっかけってことなのかなー。
よくわからないけど、ま、そうだなー。

「…………こ？かーこ？」

あ、鳴が起きたみたいだ。
んー、今日はなにをするかなー？




「鳴−、マスターへの報告はー？」
「昨日の夜、したの。」
「んー。それなら……あれ？僕、呼ばれてない？」
「マスターと話したいことがあったから、呼ばなかったの。」
「そっかー。」

何だろ？
鳴の様子がすこし、おかしい気がする。
きのせいかなー？
でもさ、こういうのって、よくわかんないんだよなー。

「……もしかして、あんまり眠れなかった？」
「そ、そんなこと無いの！」

ほら。違うらしいし。
あたま、よくなりたいなー。
なんて言ってたら、
「昔はこうじゃなかったのに、どうしてこうなったのかしらね。」
……って、猫のにはあきれられてたっけ？
いや、うん。それは僕が知りたいんだけどなー。
あいつも古株だろうしさ。

「なー、昔の僕ってどんなだったー？」
「……えっ？む、昔って、えっ？
　まさか、思い出したの？」
「いやー、ぜんぜんだけどさー。
　なんとなく気になってなー。」
「……そうなの。
　どんなことが知りたいの？」
「えーと。ひとつ前の体の僕が、あたま、よかったのかどうか？」
「良かったの。バカだったけど、良かったの。
　今の頭と身体の潜在能力を逆転させて表面化させたくらいには。バカ。」
「んー？」

こんな感じで。
よくわからない返事がくるんだ。
ま、そんなことよりも。

「今日も水辺だったっけ？」
「そう。マーメイドを試しておきたいの。」
「技は見たけど。使って分かることもあるからなー。」

そんなことを話しながら歩いていると。
へんたいがいた。
……あれ？へいたいだっけ？
へんたいであってるよなー？なー？

「……変態なの。」

鳴も小声でそんなこと言ってるし。あってるっぽい。
とにかく、へんたいがいたんだ。
話かけるタイミングをのがして、ぼーっとしてたんだけど。
こうやって攻撃してくるなら、対処するしかないんだよなー。

「やるしかないかー。鳴ー？」
「おーい、鳴−？」

やっぱり、調子がよくないのかも？
まー、なんとかなるかなー。