リーが寝返りをうった振動で目が覚めた。
一瞬自分がどこにいるかが分からず少し戸惑ったが、周りの景色と仲間とやらの姿で思い出した。
自分が動いた拍子にリーを起こすかと心配したが幸いリーは自分の腕の中で静かに寝息を立てている。

一揆とやらに参加する事になったその経緯がいまいち思い出せない。それはリーも同じのようだ。
そもそも記憶が曖昧なのだ。
自分たちがかつて住処としていたサーカスのテントでのあの惨劇、それすら詳細はうまく思い出す事ができない。
よくわからないのではあるが、リーも自分も、ここでの生活は悪くないと思っているし、戦ったり一揆に参加することで何かしら得られるものはあるに違いない、と前向きな気持ちでここにいることにした。
リーは元来の性格のせいかまだ仲間とやらとは打ち解けていないらしい。
自分が間に入ってやろうにも自分は獣語しか喋られない。
と、リーが何やら寝言を言った。
「ケットシー殿、それは困る……ライニアルは僕の……」
そういえば昼間にもそういったやり取りを聞いた。
新しく契約をしたケットシーという猫に似たものに対して何故かリーが難色を示しているのだ。
リーが強く腕を引っ張るので楽な姿勢に変える事にした。
何故か毛までちぎらんばかりに引っ張るものだから、少し痛い。
「そのしっぽではライニアル殿にも及ばぬわ」
声には怒りの色が出ている。どんな夢を見ているのだろう？

その小さな頭に自分の喉元を寄せ、ごろごろと鳴らしてみた。
すると、リーはふふ、と優しい笑い声を発した後後安心したようにまた寝息を立てた。

今晩はとても心地の良い夜だ。
リーが朝までゆっくり寝られるといい。
良い夢を見られるといい。
そう願いながら、自分もまた目を瞑り深い眠りに落ちる事にした。

「ライニアル、ずっと一緒だよ」
薄れゆく意識の中、またリーの声を聞いた気がした。